デリケートな排泄トラブルと向き合うために




終末期になるとトイレにいけなくなる

ガンの終末期になれば、足腰の力が弱くなり、自分の足でトイレに行けなくなってきます。

それは、悪液質が進行するためであり、避けられません。

足腰が弱くなるため、間に合わないなんてこともあるでしょう。

トイレに自分でいけなくなるということは私達にとって大きな問題です。

なぜなら、下の世話を人にしてもらわなくてはならなくなるからです。

もし、自分でトイレにいけなくなったとしたら、相当自身を失うでしょう。

残念ながら、がんの進行とともにトイレにいけなくなるのは自然の経過です。

もう一つ、排泄に関して大きな問題は「夜尿」です。

寝ている間にオモラシなんて想像できないかもしれませんが、ガンが進行してくると夜尿をしてしまう人は少なくありません。

おもらしも、筋力が低下によって生じる1つの経過です。避けることができないのです。

この記事では他人に排泄の世話をしてもらうというの悩みをどのように受け止め、対応していくとショックが少ないかについて解説していきます。

どうして排泄の自立が失われていくのか?

括約筋の筋力低下

病気が進行してくると多くの人は尿道括約筋の機能が低下し、失禁(おもらし)してしまうようになります。

普通なら、膀胱がパンパンになってもおしっこを我慢できるのですが、ガンが進行すると、おしっこを止めておく筋肉が弱くなり漏れてしまいます。

尿意とは膀胱がある程度膨らんで、「おしっこしたい」と感じる感覚です。

尿意を感じるときは、すでにある程度膀胱が膨らんでおり、普通ならおしっこしたいと思ってからでも我慢できます。

しかし、ガンが進み括約筋が弱くなってくると、尿意を感じてから、尿が漏れてしまうまでの余裕が少なくなります。

そのため、オシッコしたいと感じてから、トイレにいく間に失禁してしまうのです。

 

夜尿のメカニズムは複雑ですが、原因の1つに筋力低下(括約筋の筋力低下)があります。

咳をしたときに尿が漏れてしまうのも括約筋の低下が原因です。

足腰の筋力低下

ガンが進行すると足の筋力が低下してきます。

トイレにいくまでの時間がかかるため、トイレに行く途中で失禁してしまうのです。

意識レベルの低下

がんの進行とともに、頭の機能が低下してきます。意識レベルが低下すると、尿意を感じなくなり失禁してしまいます。

意識レベルが低下している頃には、トイレに行けなくて辛いとか、誰かの世話になることが辛いという苦痛は殆ど感じません。

ガンが進行し、筋力が弱くなってくるとオシッコのトラブルは必発となります。

多くの方は病気が進行するにつれて、オムツを付けたり、ポータブルトイレを使ったり、尿瓶を使う必要がでてきます。

 

排泄トラブルと自尊心

オシッコの問題は漏れるという症状だけでなく、羞恥心自尊心に関わってくる問題です。

自尊心が傷つく苦痛をスピリチアルな苦痛と表現する場合もあります。

自尊心が関わる問題はとてもデリケートで取り扱いが難しいとされています。

家族であっても、排泄の世話にはなりたくありません。

むしろ家族であればこそ、世話になりたくないのかもしれません。

失禁したときや夜尿をしてしまったということを、隠したいという気持ちは誰にでもあります。

ですから、家族が、おもらしをするようになってしまった患者と上手に付合ってゆくのは難しいかもしれません。

威厳のある父親の場合、すごくオシッコ臭いのに、一緒に暮らしている家族がおもらししていることに触れられない。

なんとかしてオムツをしてもらいたいのに、言い出せないという話はよく聞く話です。

デリケートな問題とどう向き合うか

デリケートな問題に対し、直接問題解決策を提案すると拒絶されがちです。

いきなりオムツを履かせたり、尿瓶を使わせるのは上手い方法ではありません。

ではどのような方法がよいのでしょうか?

排尿回数の記録を紙に書いてもらうとどれぐらいトイレに行っているか客観的にも評価できるようになりおすすめです。

自分で記録を取らせるのがポイントです。

実際の記録を取ると排尿の問題を自覚するようになります。

排尿回数が多ければ、夜何度もトイレに行くのは大変だから、夜間だけでもオムツを使ってみようとか、ポータブルトイレを使ってみようとか提案できるようになります。

おもらしするからオムツという戦略ではなく、回数が多くシンドイだろうからオムツをはいてサポートしましょうというスタンスです。

夜の回数が多いので失敗しちゃうこともあるだろうからオムツを履きましょう」と言った具合です。

失敗がなければオムツを履かなくてもよくなるだろうからお試しで履いてもらうように話をすれば逃げ道を作ることができ、本人も試してみようという気持ちになるかもしれません。

 

オシッコの管(膀胱留置カテーテル)を入れる時も、いつでも抜くことが出来ることを患者さんにお伝えすることで逃げ道をつくり、受け入れてもらい易くするのは病院では常套手段のようです。

がんの進行に合わせて、排尿トラブルが生じるのは自然の流れです。羞恥心はあれど、オムツを履いたりオシッコの管を入れる方が楽に過ごせるようです。

追記
骨盤体操は尿失禁に効果的ですが、病気が進行してから体操しても辛いだけで効果は少ないです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。