抜いた腹水を再利用する腹水濾過濃縮再静注法について

末期ガンの腹水や浮腫はガンが進行してしまった結果であり、ガン自体を小さくし、栄養状態をよくしない限り、腹水は減りません。

残念ですが、ガン末期の腹水の根治的な治療方法はありません

しかし、腹水による、お腹の張りや息苦しさ、食欲低下、吐き気などの症状を緩める治療法はあります。

利尿剤で血管内の水分を減らすだけで、張った感じが軽くなります。モルヒネなどの痛み止めを使うと張り痛い感じを少なくできます。お薬を適切に使うだけでもずいぶん楽に過ごせるようになります。

腹水による強い腹部膨満感を薬でコントロールできない場合は、腹水を抜くと楽になります。食欲が改善したり、活動性が回復する場合もあります。しかし、腹水を抜くと体力が落ちてしまうという側面があります。腹水には多量のタンパク質が含まれているので、腹水を抜くと体のタンパク質が消耗してしまいます。

腹水を抜いてもまた腹水が作られるのですが、新たに作られた腹水の中にも貴重なタンパク質が含まれており、体のタンパク質が腹水として消耗してしまうのです。



腹水濾過濃縮再静注法

抜いた腹水の水分だけ除去し、タンパク質を体に戻す方法が腹水濾過濃縮再静注法です。一般的にカートCART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)と呼ばれています。

腹水を抜き、透析のような血液濾過装置を用いて水分や有害な細胞を取り除き、濃縮されたタンパク質を静注で体に戻すという方法です。

貴重なタンパク質を体に戻すことができるので、腹水除去による体力の消耗を最小限に抑えることが可能です。保険適応もあります。保険適応は月一回です。何度も継続して行いたい場合は相応な費用がかかります。

 

少量の腹水を抜いて、濃縮して体に戻しても効果は限定的なので、大量の腹水を抜くことが出来ないと効果を実感できないかもしれません。

腹水濾過濃縮再静注療法を行った後も、再び腹水はたまります。しかし、楽に過ごせる時間が増えるので選択肢として知っておいても良いでしょう。

カートの適応については主治医の先生と相談してください。

カートは理にかなった治療法ですが、全く害がない訳ではありません。濃縮した腹水を血管内に戻すのには時間がかかりますし、腹水を戻すと多くの方は発熱します。

腹水が溜まる時期の発熱はかなり体力を消耗します。CARTは決して楽な治療ではありません。場合によっては大切な時間を損なう恐れがあります。

家族はは出来る限りの医療を患者やにしてあげたいと思うものですが、出来る限りの医療が患者や家族にとって本当に最大幸福をもたらすのかという疑問を常に保つ必要があります。

CARTは高価な治療です。治療にどれぐらいの時間や費用がかかり,どのような副作用があり、そしてどんな効果が期待できるのか。それは患者の最後の時間にとってどれほど価値があるか。家族に負担になっていないかをよく考えて治療選択して欲しいと思います。

 

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終末期、緩和ケア、死生観の研究をしてます。終末期を穏やかに過ごすためには医療サイドと家族サイドの見解の一致が不可欠です。死への知識を深め、家族の力をアップさせることが終末期の苦痛を減らす大きな要素だと信じております。