だるさの治療と鎮静について




だるさの治療には限界がある

現在の緩和医療は痛みや呼吸困難といった症状はある程度コントロールできるようになっています。

しかし、悪液質が原因の症状のコントロールはいまだできていません。

つまり、悪液質が原因の食欲不振や体のだるさ(倦怠感)をとる方法はまだまだ確立されていないのです。

堪え難い辛さが長期間続く場合に限り、鎮静をしてもらいます。鎮静とは強制的に寝かせる医療行為を言います。

鎮静は全ての苦痛を消失させますが、意識がなくなるため人格そのものを消失させますので、安易に行ってもらう医療行為ではありません。

まずは鎮静以外の治療法を心に留めておいてほしいので、鎮静以外の治療法の解説からいたします。

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鎮静以外のだるさ・倦怠感の治療を理解しておく

癌末期の場合、体のだるさの主な原因は悪液質です。しかし、体のだるさの原因が、悪液質以外の場合もあります。

たとえば、腎不全や肝不全などです。肝不全や腎不全は原因を解除するとよくなることがあります。

尿の通り道が詰まって生じる腎不全は、管を入れる等の医学的な処置をして、尿の流れを良くすることで改善します。

胆汁の流れが悪いことが原因の肝不全であれば、胆汁を体の外に抜いてしまう処置をすれば改善します。

肝臓への転移で、生きてゆくための限界の肝機能を下回った場合は治療法はありません。

終末期の体のだるさの主な原因は悪液質でしょう。

それではもう少し、ガンの痩せに対する治療法についてお伝えしたいと思います。

 

一時的に効果がある治療法はあります

コルチコステロイドと いって抗炎症作用のある薬です。いわゆるステロイドです。

悪液質がかなり進行し、食欲が出ていないような状態の時に使用すると食欲が改善したり、体のだるさが改善します。

しかし、余命が数週間程度になると効果が減弱してきます。

ステロイドの効果に限りが見え、倦怠感が取れなくなってきたら、「本人と過ごすこと できる時間は日単位になっている」と判断しなくてはならないでしょう。

「からだのだるさ」に対する、薬の治療には限りがあるのが現状です

日本で治療法として立されているのはステロイド、黄体ホルモン、メトクロプラミドぐらいです。

できるだけ、夜間熟睡できるように眠剤を調節したり、マッサージや温浴などで気分転換をする工夫も重要になってきます。

 

治療方法以外に知っておいてほしいこと

「だるさ」の強さには時間的な波があり、その日すごくつらくても翌日はよくなることがあります。

強いだるさの波がくると元気がなくなり、「早く楽になりたい。」「もう終わりにしてほしい。」「だるくて死にそう。こんなに辛いなら死にたい。」と言う方は少なくありません。

もしあなたがガン患者の家族だとしたら、「死にたい」というような最高にネガティブな発言されたらどうしますか?

なんともならないからだのだるさを訴える家族を見ることは初めての体験であるなら、辛そうにしている患者のそばにいると、何もしてあげられない無力感から居たたまれない気持ちになることでしょう。

死を看取ることが初めての場合は何も出来ない自分の無力感に心が痛むのは普通のことです

看病を一生懸命する人ほど、「もらい疲れ」をすることがあります。懸命に患者のことを思う気持ちが強い家族の中には「こんなに辛いなら早く楽にさせてあげてください。」「眠らせてやってください」と懇願したという話も聞いたことがあります。

涙ながらに「もう死なせてあげてください。」といわれる家族もいるとのことです。

患者と一緒に病気と向き合っているからこそこのような発言をしてしまうのですが、あなたに思い出してほしいのです。

からだのだるさには時間によって波がある

朝「もう死にたい。終わりにしてください。」といっていた人が、昼になって笑いながら家族と話をしていることはよくあることです。

孫の顔を見ただけで、だるさが軽くなる場合もあります。

「だるさ」に対してはクスリなどで治療できることは限りがありますが、気分転換をはかったり、だるさが軽減するまでじっと待つことが、薬物治療以上の効果をもたらすことがあるのです。

だるさが軽くなるまで数時間だけ待ちましょう

体のだるさを強く訴える患者の傍に何もできないでいる状態を想像してみてください。

そばにいて、手を握ったり、足をさすったり、また何もしないでそばにいるだけでも患者の心の支えになり、体のだるさを軽減することになるのです。

あなたが家族なら、辛そうにしている末期ガン患者のそばについていてあげてください。軽く手を握り、じっとだるさが去るのを待ってあげてください。

 

体や足をさするなど本人が気持ちがいいというのであれば、ちょっとさすってあげてください。

「足をさすってくれている間だけは、だるさがとれるんだけどねぇ。」という終末期患者の方は少なくありません。

家族が家に帰ったあとに看護師に「足をさすってくれー。」とナースコールする方もいるぐらいです。誰かが傍にいて、からだをさするとだるさが楽になり安心感が得られるようです。

 

体のだるさは心の状態に直結しているのでなるべく家族にそばにいてもらう

家族が病人のそばにいるだけで、安心しだるさがかるくなります。そばにいることが治療の1つなのです。




眠らせてもらう鎮静は最終手段

ここまで読んでいただけたら、いろいろな治療法や支持療法についてご理解いただけたと思います。

鎮静は最終手段だと思ってください。

様々ま治療を施してもらい、だるさが最悪まで増悪し、日内変動でも良くならないような、堪え難いだるさが長期間続きそうなら、鎮静剤を使って眠らせてもらい、苦痛を忘れ去るしか苦痛除去の方法はありません。

薬物を使って強制的に眠らせてもらうことは、人格を消し去ることであり、本人にとって、つらい決断になります。

また、家族、医療従事者にとっても、強制的に人格を消し去る鎮静は寂しく、辛い決断になります。

一度鎮静をかけても、毎日、目を覚ますという間欠的な鎮静がとられることがほとんどです。一度鎮静されたからといって、今生の別れではありません。

鎮静の時は、家族がそばにいて本人が寂しい思いをしないように眠ってもらいましょう。

鎮静時もそばについていれば、本人だけでなく、家族にとっても納得できる鎮静になると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。




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