自分らしい死に際を真剣に考えるべき時代になってきた




人生会議という言葉をご存知ですか?

ガンという病気を患っているのにも関わらず、死というテーマから避けて生活している人は少なくありません。

ガン患者のほとんどの方が、少しでも死を感じなくていいように、穏やかに過ごしたいと願っているでしょう。

実際、がん患者でもいつでも死について考え続けている人はいません。時々、死の恐怖に怯えたり、避けられない将来について考え、答えが見つからず狼狽するかもしれません。

 

がん患者の家族や友人としては、本人ができるだけ死を感じさせないように、穏やかに過ごしてほしいと願うことでしょう。

判断力がしっかりあり、足腰もしっかり動くときは、少しでも死を感じないように生活して行くほうが穏やかに過ごせます。

ガンという病気は余命一ヶ月ぐらいから急激に悪くなります。動けなくなって入院して痛みを取らないといけなくなってから、大切なことを話そうと思ってもうまくいきません。

 

ガンの終末期は死に近づくにつれ、筋肉が衰え自分のことが自分で出来なくなります。頭の機能も徐々に落ちてくるため、自分に自信がなくなってくるでしょう。

意識がしっかりしている間に、どんな形のお別れをする方が素晴らしい人生だったと言えるか、判断力や足腰がしっかりしている間に考えておいてください。

 

ある70歳代の女性が、癌治療中に重い感染症にかかり、大きな病院に入院することになりました。

ガンと宣告されていましたが、入院前は自分のこと(摂食や排泄など)は自分で行えていたし、普通に話も出来ていました。しかし、入院後は意識状態が悪くなったため、ほとんど寝ているような状態になっていました。感染症のため腎臓の機能が急激に悪化し、集中治療室で積極的な治療をしないと死んでしまうとお医者さんに言われました。

急に状態が悪くなったので家族はどうして良いか分からず、出来る限りのことをしてくださいとお医者さんにお願いしたのです。治療はうまくいきましたが、腎臓は壊れてしまい、透析が必要になりました。意識状態は良くなったのですが、認知機能の低下がすすみ自分が何のために病院にいるのか分からなくなってしまったのです。

感染症を治療してくれた大きな病院からは退院を薦められ、自宅に帰ってきたのですが、24時間介護が必要となってしまいました。とても自宅ではみられないので、療養型の病院に入院しました。なぜ自分が入院しているのか分からないので、入院している間「家に帰りたい、家に帰りたい」と繰り返し言っていたようです。

ご家族はこんな状態になるなら「感染症になったとき、往かせてあげれば良かった」と後悔したそうです。

おそらく本人もこんな最後を迎えたいとは思っていなかったでしょう。





極端な作り話ですが、想定外の出来事ではありません。ガンと診断されていたけれど、普通に生活していると急変したとき、どのような最後を迎えさせてあげることが良いのか分からなくなります。

当然、治療が上手くいったときにもとの状態に戻ることもあり得ます。

しかし、元に戻らない場合、本人が希望していた人生の最後とは全く違うモノになってしまうのです。

 

このようなケースになった場合、ご家族の中にはもし良くなるなら治療をお願いしますと言われる方もいるでしょう。間違った選択ではありません。もう十分生きたので積極的な治療を希望しませんというのも間違った選択ではありません。

重要な決断ですので、後悔しない選択をしなくてはなりません。

ではどうしたら重要な決断を間違えずに行えるのでしょうか。

そのためにはご家族内で予め十分なコミュニケーションをとっておく必要があると考えています。不幸な状態になった場合、どうしたいのか、どうしたら家族に迷惑をかけずに過ごせるか。そういうことを全て話し合っておかなくてはなりません

ガンという病気にかかるとほとんどの人は体力が落ち、頭の機能が落ち、徐々に寿命をむかえます。しかし10%ぐらいの人は余命予測に反し、急変してお亡くなりになると言われています。

10人に1人が急変するのに、死に際の準備をしていない人が多すぎます。

70%の人が、終末期になると自己決定能力がないと言われています。Silveira MJ, NEJM 2011




アドバンス・ケア・プランニング:ACP

緩和ケアやガン関連医療の業界では「ACP:アドバンス・ケア・プランニング」という取り組みがなされています。

最近よく聞かれる言葉です。あまり馴染みがない言葉かもしれません。

アドバンスケアプランニングの定義は「将来の意思決定能力の低下に備えて、患者やそのご家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合う過程(プロセス)」です。

具体的にどのようなことが行われているかというと、まだ余命に余裕がある状態(再発を宣告された時が多い)に病気の本人と家族と医療従事者で話し合いの場をつくります。

話し合う内容は生まれてから今までの自分の歴史を振りご本人の考え方や生死に関する捉え方についてです。家族や医療従事者に自分の歴史と死生観を語らっておくと、ご本人が自分のことを自分で決められなくなってもご家族が本人の意思を押し計らうことが出来るようになります。

要するに「死に際どうするか」についての話し合いです。

エンディングノートもACPの1つの取り組みです。エンディングノートは一人で書くことが多いので、ご家族がご本人の意志を押し計らうといった場合の意思決定の役に立ちにくいです。

大切なことは、話し合っておくことです。話し合いは一度で行う必要はありませんし、遺言ではないので弁護士さんは必要ありません。

病状の進行もありますので、定期的に行う方がいいでしょう。ガンになったばかりの頃と筋力が弱まって移動する距離が減ってきた状態で死に対する考えが変わってくるのは当然です。

出来ることならお医者さんや看護師さんの前で話し合った結果を報告しておくとスムーズでしょう。

縁起でもない話は、出来るだけ早い時期から始めた方が話しやすいです。段々体力がななくなり、死を意識するようになってから話し合うのは辛いとおもいます。ガンと診断されたその日から、カッコイイ死に際について話し合うべきでしょう。

「死ぬときどうしたい」という質問ではダメです。「カッコイイ死に際について考えておきたいんだ」ぐらいの攻めた質問をしていきましょう。

 

縁起でもない話のきっかけ作り

ご家族であっても、死に際について話し合うのは縁起でもないことと避けている人も多いでしょう。話しておかないといけないと思っていることを話すには、きっかけが必要です。

きっかけを作ると思いもしなかったすばらしい答えが見つかる場合があります。

ここで紹介するのは「もしバナゲーム」です。普段聞きにくい質問がカードに書いてあります。ゲームを通じて死に際について話し合うきっかけを作れそうです。

まとめ

自分らしい死に際についてもっと話し合っておくべきでしょう

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。