末期のガンの痛みの原因と機序について




ガンになるとどうして痛むのか知っていますか?

ガンの症状といえば「痛い」「苦しい」が有名です。痛みは体を守るために必要な生理反応です。

がんの痛みは、正常な生理反応とは異なり、防御的な意味合いはほとんどありません。

ガンの痛みはガンの進展にともない、正常な組織を破壊して生じます。

正常な場合は痛みは警告としての生理的な意味がありますが、ガンは痛みという正常なシステムを破壊するため、異常な痛みを生じると理解してください。

 

最近になり、我慢せず、痛みを取り除く方針が浸透してきています。しかし、痛みは我慢した方がいいという日本人特有の美徳があり、かなりついよ痛みでも平気な顔をして我慢している人たちがいます。

わたしがお会いした方でも、すごく痛いはずなのに、顔にはミジンも出さず普通に話をしてくれた方がいました。その方は、痛いというとお医者さんや看護婦さんに迷惑がかかると考えているため、痛みを表現することができないようでした。

迷惑がかかるから痛みを伝えないという人は少なくありません。痛みを訴えない方の多くは、人生において痛みを訴えたことがほとんどなく、痛みを伝えるのが上手くありません。

 

ガンの痛みの種類

実は痛みを感じる経路はたくさんあります。痛みを増幅させる経路、痛みを抑制する経路等もあり、すべての経路をお話しすると長くなってしまうので簡単に原因だけ説明します。

  • 内臓の痛みの受容体を刺激
  • 神経を破壊
  • 内臓の筋肉が緊張
  • ガンによる炎症
  • 骨転移
  • 出血による刺激




内臓の痛みの受容体を刺激

肝臓や腎臓などの表面を覆う被膜には痛みを感じる受容体があります。ガンが大きくなり、被膜が伸びたり、被膜を破壊すると強い痛みを感じます。

ガンが背中方向に広がると、後腹膜を刺激し痛みを感じるようになります。後腹膜より背中側にある臓器(腎臓、膵臓、下行結腸など)が大きくなると痛みを発します。

 

神経を破壊

ガンが大きくなり、神経を破壊し始めると、異常な刺激が伝わり、痛みを生じるようになります。神経を破壊する痛みを神経障害性疼痛と呼びます。今まで感じたことのないような焼けるような痛み、ジンジンするような痛み、しびれるような痛みを感じるようになります。

痛みを強く感じる神経には三叉神経、肋間神経、腕神経叢、腹腔神経叢、骨盤の神経叢などがあります。神経叢とは神経の束です。たくさん神経が集まっている場所です。

三叉神経は顔面に分布する神経です。目にゴミが入るとすごく痛いですよね。三叉神経は痛みを強く感じる神経です。咽頭癌や喉頭がんが進展し、三叉神経を損傷すると強い痛みが発します。

肺がんが大きくなり肋間神経を損傷すると肋間神経痛が出てきます。

 

内臓の筋肉が緊張することによる痛み

筋肉は強く緊張したり、酸欠になると強い痛みを発します。産後の後腹の痛みも子宮が強く収縮することが原因です。

もしかしたら、尿路結石の経験がある方がいるかもしれません。尿路結石は石が尿管を詰まらせ、その上の尿管の圧が上がり、激痛が生じます。

ガンが大きくなり、腸が詰まってしまうと、詰まった部分よりも口側が膨れ、圧が上がり、腸管の筋肉が伸びて緊張し痛みを生じます。胆管や膵管が閉塞して、内圧が上がっても強い痛みが出ます。

ガンの炎症による痛み

ガンが進展すると、その周囲の正常組織はガンがこれ以上大きくならないように、炎症を起こ、癌細胞を殺そうとします。基本的にガン細胞の勢いが強ければ強いほど、炎症は強くなります。

膵臓癌や肺がんは周囲の正常組織に強い炎症を生じさせます。

蜂に刺されると、皮膚が腫れ上がり、赤くなり、熱くなり、痛みを発しますよね。炎症は近くの神経を刺激し痛みを発します。先ほど申しました、内臓の被膜や後腹膜、神経に炎症が及ぶと痛みが強くなります。




骨転移

骨を覆っている骨膜には痛みを感じる受容体があります。骨折すると痛いですよね。あれが骨膜を刺激した痛みです。

骨に転移し、骨膜を伸ばしたり、破壊すると強い痛みを発します。体を動かすたびに骨に圧がかかり、骨膜に圧がかかるので痛みが出てしまいます。

骨転移による炎症が骨膜を刺激し、痛みを生じるのです。

骨転移をすると、骨としての支える機能が破綻するので、骨折しやすくなります。骨折すると、痛みが強くなるだけでなく、日常生活が制限されてしまいます。

 

血液による刺激

血液は膀胱を刺激したり、腹腔内に出血すると強い痛みを発します。

 

実は、この5つ以外にも痛み生じる原因はあります。治療に伴う痛みや寝たきりの時間が長くなると生じる痛み、手術による痛み、口内炎の痛み、免疫力低下による帯状疱疹の痛みなどもあります。

この記事では一般的な癌性疼痛、ガンによる痛みの原因について書かせていただきました。

補足
緩和医療の書籍でよく目にする、内臓痛や体性痛、神経障害性疼痛というのは薬剤を使う上での分類であり、痛みの理屈から分けられているようです。
局所がズキズキ痛いと体性痛、ズーンと痛いと内臓痛。内臓痛は麻薬性鎮痛薬が効きき、体性痛はロキソニンのような薬が効きますというような分類です。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ガンの痛みの関連記事欄がございますので参考にしてください。




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