動かないと体力がなくなると言う感覚はとても正しくて、病気だからといって寝てばかりいると筋力が弱まります。
筋力低下が全身倦怠感の原因となり、さらに寝てばかりになってしまうという悪い循環になってしまう方が多くいます。
動けるであれば、動いた方が筋力低下にはよさそうだというのは今では常識となっています。
がん患者は癌細胞の炎症のため徐々に筋力が低下してきます。筋肉の低下をサルコペニアと呼びます。
運動はがん悪液質に対して予防効果があります。運動自体に抗炎症作用があり、食欲を改善するためです。
でも、どのぐらい運動をしたらよいのかは悪液質の進行程度によって異なります。どの程度の運動療法をするべきか、簡単に説明しますね。
悪液質に対する運動療法
痩せがかなり進行した状態で、無理な運動をすることは決して望ましいとは言えません。
食事でとるエネルギーよりも多くのエネルギーを運動で消費すれば、脂肪や筋肉が消費されてエネルギーになります。
がん悪液質が進行し、消費が増えているのに、たくさん運動することはダメってことです。
しかし、寝てばかりいると筋肉が衰退るし、食欲が低下するので、動ける範囲で運動した方が悪液質やサルコペニア予防になります。
運動がサルコペニアや悪液質予防になるというのが一般的な見解のようです。
それではどれぐらい運動したらいいのかをざっくりですが解説します。
がん悪液質でまだ筋肉の痩せが強度でない場合
運動にはレジスタンストレーニングといって、負荷を掛けるトレーニングがあります。
筋肉を増やす効果や筋肉維持効果が期待できるのが、レジスタンストレーニングです。
がんを患っている方達が、ボディービルダーたちのようなウエイトリフティングや、坂道を駆け上がるようなレジスタンストレーニングはするべきではありません。
骨転移などが潜んでいた場合、骨折することもあり得ますし、筋肉が細くなるのと同様に骨の強度も弱くなっていますので、重たいものを持ち上げて筋線維をブチブチ切るような運動はダメです。
ガンを患っており、まだ筋肉の痩せが強度でない方達に適したレジスタンストレーニングは、3−4METs(メッツ)の運動だと言われています。
3メッツの具体的な運動とは普通の速度での散歩や軽いウエイトトレーニング(10kg未満)や家の中の掃除などです。
4メッツの具体的な運動は早足での散歩や坂道の散歩などちょっときつめの運動になります。
エクササイズバンドを使ったレジスタンストレーニングは最近人気があります。1つのチューブでいろいろなパターンのトレーニングが可能です。
歩くだけでは、腕や背中の筋肉まで刺激を与えれません。エクササイズバンドは安価で簡単に身体中の筋肉に刺激を与えれます。
悪液質予防のレジスタンストレーニングはウォーキングとエクササイズバンドを使ったトレーニングで必要最小限はまかなえると思っています。
悪液質の進行にはあらがえないので、これ以上のエクササイズを行っても意味はないでしょう。
どれぐらいの時間をやるべきかは議論の余地がありますが、軽度の疲労感が出る程度が適切だと思います。
やり過ぎは消耗の原因になりますのでご注意を。
ジョギングは速度にもよりますが、結構な負荷がかかります。
有酸素運動自体に抗炎症作用があるという報告もあり、ある程度長い時間運動した方がいいのかもしれませんが、全身の状態や自分の体力と相談して運動量を決めることが重要です。
何より大切なことは、怪我をせず運動習慣を続けることです。
がん悪液質が進行し、痩せが強度になったら
痩せが見られるようになってから、3−4メッツの運動をすることは厳しいと思います。
ゆっくり家の周りや家の中を歩くだけでも、筋肉の萎縮予防効果が有るようです。多少体がだるくても家の中を移動したり、外の空気を吸いに出かけたりすることは、悪液質やサルコペニアの予防効果を期待できます。
ゆっくり歩いたり、家の中の簡単な家事が3メッツ未満の運動です。
この時期も軽度の疲労感がえられる程度がベターな運動量です。
気持ちが下がり気味な時期ではありますが、出来るだけ長く自分らしく過ごすためにも運動習慣を続けてほしいですね。
運動療法に栄養補助療法も組み合わせるとより効果的
高齢に伴うサルコペニア(筋肉量の減少)に対してはたんぱく質、アミノ酸の栄養補助療法はレジスタンス運動と併用すると効果が有るというデータが蓄積されつつあります。
がん悪液質に対してのデータはまだ少ないですが、それでも運動療法に栄養補助療法(HMBやプロテインやアミノ酸のサプリメント)を組み合わせることは理にかなっています。
まだ筋肉量減少が強度でない場合は、栄養補助も組み合わせてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。がん患者を苦しめる悪液質に関する記事が他にもあります。お役立てください。