肝臓や腎臓の機能を奪う
がんが進行すると、肝臓や腎臓といった重要な臓器の機能が低下し、生命機能が破綻することがあります。これを、それぞれ肝不全と腎不全と呼びます。
なぜ臓器の機能が停止するのか
がん細胞は、徐々に大きくなり、正常な臓器のスペースを奪っていきます。
- 肝臓:がん細胞が肝臓を占拠すると、正常な肝細胞が減り、体内の解毒や代謝といった重要な機能が維持できなくなります。
- 腎臓:がんが腎臓と膀胱をつなぐ尿管を塞いでしまうと、尿が作れなくなり、体内の老廃物が蓄積してしまいます。
これらの機能が停止すると、体は正常に働けなくなり、命を終えることになります。
肝不全による死
肝機能の低下がもたらす深刻な影響
がんが進行し、肝臓の機能が低下すると、体は生命維持に必要な働きを失っていきます。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、かなりの部分が侵されても症状が出にくいのですが、ひとたび機能が低下すると、複数の問題が一気に現れます。
1. 老廃物の蓄積
肝臓は、体にとって有害な老廃物や毒素を分解する重要な役割を担っています。たとえば、タンパク質がエネルギーに変わる過程で生じるアンモニアは、肝臓で無毒な尿素に変換されてから体外に排出されます。
しかし、肝機能が低下すると、この分解がうまくいかなくなり、体内に有害物質が蓄積します。
- 肝性脳症: アンモニアが脳に溜まると、手の震え、けいれん、そして意識障害を引き起こします。
- 不整脈: エネルギー代謝の老廃物である乳酸が溜まりすぎると、心臓の働きが悪くなり、最終的には心臓が止まる原因となる不整脈を生じることがあります。
2. 重要な物質の生成停止
肝臓は、生きていくために不可欠なタンパク質(酵素)も作っています。
- 出血: 血液を固めるためのタンパク質が不足すると、出血が止まりにくくなり、大量出血を引き起こす危険性が高まります。
- 消化不良と痩せ: 消化酵素が作られなくなると、食べ物がうまく消化・吸収できなくなり、食欲不振や痩せが進み、命に関わります。
3. 外見に現れるサイン
肝機能が極度に低下すると、老廃物であるビリルビンが溜まり、皮膚や目が黄色くなる黄疸が現れます。さらに進行すると、皮膚が緑色に見えるほどになることも。
また、血液を固めるタンパク質の不足により、皮膚の下で出血しやすくなり、紫斑(皮下出血)が生じることがあります。これらの症状は、肝臓が相当に弱っていることを示しています。
肝臓への転移がんが大きくなることで正常な部分が減り、最終的に生命維持ができなくなってしまうのです。肝臓の機能が低下するわけではありませんが、肝転移や肝細胞癌が肝臓内で出血し急激な最期を遂げる場合もあります。
腎臓の機能低下の場合
腎臓は、体内の老廃物を排泄し、水分や電解質(ミネラル)のバランスを保つという、命に不可欠な役割を担っています。しかし、がんの進行によってこの機能が低下すると、体は深刻な危機に陥ります。
なぜ腎機能は低下するのか
腎機能が低下する原因はいくつかありますが、特にがんと関連が深いのは以下の2つです。
- 尿路の閉塞: 肝臓とは異なり、腎臓そのものにがんが転移するケースは少ないですが、がんが大きくなり、腎臓から膀胱へ尿を送る**「尿管」**を圧迫してしまうことがあります。尿がうまく排出できなくなると、老廃物が体内に溜まり始め、生命機能が破綻してしまいます。
- 全身状態の悪化: がんが進行し、全身の衰弱が進むと、腎臓に十分な血液が送られなくなり、腎機能が低下します。
腎機能低下が引き起こす問題
体内に老廃物が溜まると、様々な問題が生じます。
- 脳機能の低下: 有害物質であるアンモニアなどが体内に蓄積すると、脳の働きが低下し、徐々に意識が薄れていきます。
- 電解質バランスの崩壊: 尿が出ないことで、体内のカリウムが異常に増え、心臓に悪影響を及ぼし、心停止につながることもあります。
尿管の閉塞による腎不全は、ある日突然、意識状態が悪化し、急な最期を迎える原因となることがあります。特に、お腹の下や骨盤内にがんがある場合は、このリスクが高まることを知っておくことが大切です。
まとめ
肝臓機能低下はゆっくり進み、目に見えた症状が現れたときには正常細胞は非常に少なくなっており、お別れが近づいてきているサインとなります。肝転移は肝臓内での出血を生じると、急激な最期を遂げる場合もあるということを心にとめておいてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。心より感謝申し上げます。
この記事が、最期の迎え方に対する漠然とした不安を和らげ、心穏やかな看取りへの一助となれば幸いです。
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