がんは比較的ゆっくりと進行し、多くの場合は痛みをコントロールしながら穏やかな最期を迎えることができます。しかし、がん患者全体の約10%は、予想外の急変を経験すると言われています。その一つが、腸に穴が開いてしまうケースです。
このような場合、患者さんは激しい痛みを伴うため、お別れを前に苦しい時間となってしまうかもしれません。今回は、この「腸に穴が開いてしまった場合」について、その症状や経過を解説します。
腸に穴が開いた場合:急な痛みを伴う最期
腸に穴が開き、内容物が腹腔内に漏れ出すと、激しい痛みを伴う最期を迎えることがあります。これは、多くのがん患者さんが経験する穏やかな最期とは異なる、突然の出来事です。
なぜ腸に穴が開くのか
多くの場合、がんが進行して腸の内側を覆い、腸管が細くなります。腸が詰まってしまうと、その手前の部分が風船のようにパンパンに膨れ上がります。もろくなった腸の壁がこの圧力に耐えきれず、最終的に破裂してしまうのです。がんのある部分は正常な組織ではないため、特に破れやすくなっています。
腸穿孔が引き起こす痛みと炎症
腸に穴が開くと、消化された食べ物や腸液が腹腔内(お腹の中の袋状の空間)に漏れ出します。これらの異物が腹膜を刺激すると、激しい炎症が起こり、耐えがたいほどの痛みを引き起こします。特に大腸に穴が開いた場合は、大腸菌が腹腔内にばら撒かれ、全身性の炎症を引き起こし、血圧を急激に下げ、呼吸困難を招きます。
この痛みは非常に強く、腹筋がカチカチになるほどの激痛で、意識が薄れるまで苦しみ続けることもあります。
末期がん患者さんの場合、このような事態が起きても、手術で穴を修復することは難しいのが現実です。痛み止め(モルヒネなど)を使って痛みを和らげるケアを行い、見守ることしかできないケースがほとんどです。
突然の別れ
たとえ前日まで元気そうに見えても、腸穿孔や大出血といった突然の出来事によって、数日のうちに最期を迎えることがあります。このような場合、ご家族は心の準備をする時間がないため、非常に辛い別れとなります。
しかし、がんの終末期で最も多いのは、穏やかに、家族に囲まれて安らかに旅立つ最期です。腸穿孔による急変は決して多くはありませんが、起こりうるということを知っておくことは、万が一の心の備えにつながるでしょう。
ここまでお付き合いくださり、心より感謝申し上げます。
この記事が、最期の迎え方に対する漠然とした不安を少しでも和らげ、心穏やかな看取りへの一助となれば幸いです。
終末期の時間は、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大切なものです。
この経験が、お互いをより深く理解し、感謝を伝え合う機会となることを願っています。
他にも、終末期に関する記事を多数ご用意しております。ぜひ、そちらもご覧いただき、ご自身の心の準備や、大切な方へのケアにお役立てください。


コメントを残す