がん悪液質の日常生活への支障はいつから生じ始めるのか




衰えが日常生活に支障が出るのは最後の一ヶ月

がんが進行すると、体力が衰えていくことは誰もが理解しているでしょう。しかし、それがどれほど日常生活に影響するかを、詳しく説明する医師は少ないかもしれません。

このサイトは、がんの進行とともに体力が衰えていくことを、あらかじめ理解していただくために存在しています。

癌の種類による進行の速さ

がんの種類によって、体が痩せていくスピードは異なります。特に、膵臓がん、胃がん、肺がんは、体重減少が速い傾向にあります。これは、がんが大きくなる速度が速く、強い炎症を引き起こし続けるためです。

それに比べ、大腸がんや乳がん、前立腺がんは、体重減少がゆっくりと進みます。

しかし、どんな種類のがんであっても、余命一ヶ月という段階では、ほとんどの患者さんが異常に痩せています

 

最期まで続く痩せ

この痩せる傾向は、一度始まると止まることはありません。最期に近づくほど、その速度は速くなる印象があります。

「痩せ」は、単なる体重の変化ではありません。体が衰え、今まで当たり前だった日常生活が少しずつ奪われていくことを意味します。

この事実を理解しておくことで、患者さんやご家族は、迫りくる変化に心の準備ができ、より穏やかに最期の時間を過ごせるはずです。

 

 

最後の1ヶ月:自立した生活から、支えが必要な生活へ

余命が数ヶ月になると急激に体力が落ちたように感じることがありますが、最後の1ヶ月は、様々なことが急速にできなくなります。まるで、誰かの助けがないと生きられない赤ん坊のように、生活のすべてに介助が必要になるのです。

がんの診断を受けてから最期を迎えるまでの期間のうち、約7~8割は普通に生活できると言われています。悪液質の進行により、体力の低下は感じますが、工夫次第で自分らしい生活を送ることは可能です。しかし、最後の1ヶ月は、その状況が一変します。

日単位で進む筋力の衰え

最後の1ヶ月の筋力低下は、想像を絶する速さで進行します。昨日まで普通に飲めていた水が、次の日にはむせるようになり、数日後には水を運ぶコップを落としてしまうかもしれません。さらに数日後には、コップを口に運ぶことすらできなくなり、ついには口に含んだ水が横からこぼれてしまうほどになります。

このように、信じられないほどの速さで、できないことが日単位で増えていくのです。

 

自信の喪失と心の痛み

 

今までできていたことが急にできなくなると、人は自信を失い、精神的な苦痛を覚えます。これは「スピリチュアルペイン」と呼ばれる苦痛の一つです。

特に、がんの終末期は、老いによる年単位の衰えとは異なり、週単位、日単位で変化が起こるため、心が追いつかず、精神的な負担が大きくなります。

自力で移動ができなくなり、「自分はもう動けない」と感じたとき、人は深い絶望感を抱くかもしれません。

最期の時間を穏やかに過ごすために

しかし、この時期を穏やかに過ごすための方法はあります。それは、体の衰えを予測し、事前に準備をしておくことです。

  • 住環境の整備: 筋力が落ちて階段がつらくなったら、寝室を1階に移しておく。
  • 補助具の活用: 車いすや手すりを用意しておくことで、自力で移動できる期間を延ばす。
  • 排泄の準備: ベッドサイドにトイレを置く、あるいはオムツに切り替えるなど、排泄の介助に備えておく。

悪液質そのものを防ぐことは難しいのが現実です。サプリメントに頼るよりも、患者さんの苦痛を減らすための工夫をすることに、答えがあるように思います。

「最期の一ヶ月に何ができるか」を考え、実践することが、患者さんとご家族が心穏やかに過ごすための最も重要な鍵となるでしょう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

参考文献 森田達也(編) 2016 続・エビデンスで解決!緩和医療ケースファイル 大津秀一(著)2015 Dr.大津の世界イチ簡単な緩和医療の本―がん患者を苦痛から救う10ステップ  淀川キリスト教病院(著)2007 緩和ケアマニュアル  日本医師会 緩和ケアガイドブック http://dl.med.or.jp/dl-med/etc/cancer/cancer_care_kaitei.pdf  緩和ケアネット http://www.kanwacare.net




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