がん悪液質という言葉は聞き慣れない言葉だとおもいます。しかし、ガンの死に方、ガンの苦しみを理解するためには、まず悪液質を理解する必要があります。
悪液質をざっくりと説明しますと、筋肉と体重が異常に減る病気です。体重が減るにもかかわらず、食欲は増えません。たくさん食べても、体重は増えることはありません。
分かりやすく言いますと、「ガン悪液質」は、「ガンが原因で、異常に痩せてる」ということです。
がん患者の半数以上が悪液質になると言われています。わたくし的な見解ですが、ガンの終末期になるとほぼ100%の方が、ガンによる痩せ、筋力低下により生活に支障が出てきます。
食欲減少、食思不振、浮腫、貧血等の悪液質症状はガン末期でも早い段階では目立ちませんが、臨終に近づくにつれ症状が現れるようになります。
悪液質がなぜ問題になるかは他の記事に書いてありますので参考にしてください。
がん悪液質のメカニズム
悪液質(CACHEXIA:カヘキシー)とはギリシャ語の悪い状態(bad condition)という言葉に由来しており,太古の昔からある言葉ですが、今でもメカニズムは複雑であり、ハッキリ分かっていません。
ガン悪液質のメカニズムとして重要とされているのが、腫瘍から放出される蛋白質分解誘導因子と慢性的な炎症性サイトカインの放出です。
炎症とは本来、生体が何らかの有害な刺激を受けた時に免疫応答が働き生じる反応です。ばい菌に感染するとこれをやっつけるために、発熱したりばい菌を分解するために抗体というタンパクをつくります。
ガンになるとどういう訳か分かりませんが、異常な炎症が継続します。
炎症誘発サイトカインであるinterleukin(IL)‒ 1β,IL‒6,などが異常に分泌され、食欲中枢を抑制し、筋肉の萎縮を促進してしまいます。
食欲がなくなる
食欲中枢が抑制されると、食べたいと思っても食べることが出来なくなります。がん患者の多くの人が終末期になると「食べたいけど、食べれない」とか「食べないといけないと思っても、食べれない」と言われます。
異常な蛋白質分解誘導因子の分泌と炎症誘発性サイトカインの影響により、食欲がなくなり、体のタンパク質が分解される方向へ進んでゆきます。
低栄養状態が続いているのに、お腹がすかない、食べれないという悪循環が生じ体重減少が進行するのです。
健康な状態で、体重を減らそうと思っても、思い通り体重は減りませんよね。人間の体は体重を維持しようとするメカニズムがあるためです。がん悪液質になると体重維持機能が破綻する訳です。
筋肉の萎縮・サルコペニア
がん悪液質になると筋肉量が低下します。無意識のうちに筋肉が減ってしまうことをサルコペニアと呼びます。
サルコペニアも聞き慣れない言葉かもしれません。最近は国を挙げてサルコペニア対策をしています。高齢化社会となり、長く今まで通りの生活を送るためには、筋肉量を維持することが大切だって考えるようになりつつあります。
歳を取ると、筋肉量が減るため体力が落ち、、年々出来ないことが増えてゆくという実感は誰でもあると思います。
ガンになると筋肉量の減り方が、年単位ではなく、月単位、週単位になってしまいます。最期の一ヶ月は日に日に出来ないことが増えてゆきます。
筋肉の萎縮のメカニズムもハッキリ分かっていませんが、筋肉のタンパク合成経路の抑制とタンパク分解経路の促進が原因だと考えられています。
加齢にともなうサルコペニアの分子レベルでのメカニズムは徐々に解明されているようです。治療方法も確立しており、日々の運動やタンパク質の積極的な摂取が筋肉量を維持したり、筋肉量を増やしたりする効果があるようです。
がん患者も運動療法と高タンパク質な食事で、筋肉量の減少の予防効果が得られることが期待できます。しかし、悪液質の進行が早まり、筋肉の萎縮の速度が上がると,ヤセが進行していまいます。
悪液質の進行予防に効果が期待できる3つのサプリメント
悪液質のステージ分類
悪液質は3つのステージに分けられています。段階によって治療法が変わってくるためです。
不応性悪液質まで進むと体重減少を回復させることは困難です。悪液質段階でも、進行を遅くすることが精一杯でしょう。
ステージングをすることで、早い段階から治療を開始することができます。前悪液質段階から栄養療法や運動療法を開始することで、筋肉量減少の速度を遅らせ、栄養状態の悪化を遅らせることが可能になると考えられています。
ガンが大きくなる限り、悪液質は進行してゆくことになり、悪液質の治療が難しいのが現状のようです。そのため痩せてゆくことに対する心理的なサポートや食べれないときに出来るだけ食べやすいものを食べるようにするような栄養学的なサポートにより、安楽に過ごせることに視点が置かれてゆくのです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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