最後の一ヶ月間の病人の変化を見つめることが看取り




最後の一ヶ月の体調の変化を観察

わたしはお看取りを臨終のときだけ、患者を看ることとは思っていません。

最後の一ヶ月間の体調の激動をよく観察することがお看取りだと思っています。

 

がん患者の最後の一ヶ月間は日に日にいろいろなことが出来なくなってゆきます。

「昨日できたことが、今日できない」というのが末期癌の生活です。日に日に活動範囲が狭くなり、最後はベッドの上で過ごすことになります。

体調は日によって変わってきます。調子のいい日、調子の悪い日というのが激変します。

昨日は元気だったのに、今日は全然元気がない。という具合で過ごすのがガン終末期です。

体調の具合は下り傾向ばかりではありません。突然元気な日があったりします。なんの具合かよくわかりませんが、体調には波があります。

調子のいい日、悪い日の差に周囲の人が驚くかもしれません。周囲の人は体調の変化に驚かず、接してほしいのです。

調子が悪い日は誰にも会いたくないという感覚になるようです。逆に調子がいい日はみんなと会いたい、話をしたい、という気持ちになるようです。

昨日調子悪くて、話もしなかったからもうだめなのかも?と思うかもしれません。違います。今日は調子がいいかもしれないのです。

日内変動も激しい

新聞やテレビを見なくなり、夜になると、「仕事にいかないといけない」とか「犬が来ているから出してくれ」などつじつまの合わないことを言い出していたとしても、昼間はしっかりしているなんてことはよくあります。

一日のうちでも体調がいいとき、悪い時が現れてきます。良くなったり悪くなったりしながら、日に日に状態が悪くなってゆくのです。

 

お見舞いは時間をかけて

最後の1〜2週間に入ると調子の良い時間、調子の悪い時間があります。

患者のもとをお見舞いに行ったとき、調子の悪い時間に当たると申し訳ない感じがして、短い時間で退散してしまったという経験があるとおもいます。

もし時間があるようでしたら、数時間後にもう一度、会いに行ってみてください。意外と調子が良くなっているかもしれません。

 

ほっこりしたエピソードは深い悲しみを和らげる

このサイトに書いてある余命予測を行えば、概ねの余命予測は誰でも出来ます。しかし、意識がしっかりしている貴重な一日がいつくるかは分かりません。

トイレも自分でいけなくなり、水分もほとんどとらなくなったのに、お別れの一日前に急に元気になり、その人の仕事や家族についてたくさん話をしたという経験があります。

孫が来た日に急に元気になり、しっかりお話が出来たのに、数日後に息を引き取ったという話はよく聞くエピソードです。

このような奇跡的なエピソードは死という深い悲しみを和らげると信じています。

お孫さんだけでなく,周囲の人たちもそのようなほっこりとしたエピソードに慰められます。

体調がいい日も悪い日もありますが、最後の一ヶ月間、患者をよく観察して過ごすことはとても大切だと思います。

最後の一ヶ月間を見つめることが看取り

看取りというのは死の直前だけ行う行為ではなく、お別れの一ヶ月ぐらい前から行われる儀式だと思っていいのではないでしょうか。

いつも病人のそばに付いている必要はありません。

毎日体調が変化してゆくことを観察し、どんなふうに人間が衰え死んでゆくかよく観察することが看取りだとおもいます。

患者に会うのは1週間に一度でもいいです。最後の一ヶ月、週一回患者に合うことでいろいろなことが見えてきます。

若い世代は仕事や家事などしなくてはならないことがたくさんあります。

しかし最後の一ヶ月間ぐらいはお世話になった人のために時間をひねり出してもいいのではないでしょうか。ひねり出した時間や苦労が深い悲しみを和らげてくれるはずです。

ぜひ、時間をひねり出してください。ここまで読んでいただきありがとうございます。