がんの痛みに使う薬の正しい知識を




麻薬は法律上のネーミング、麻薬性鎮痛薬が薬理的な正確な分類

ガンの痛みに対して、どのような痛み止めを使うのでしょうか?

主な痛み止めには非ステロイド性抗炎症薬といういわゆるバファリンやロキソニンという類の痛み止めと、オピオイドと呼ばれるモルヒネに代表される薬剤を使います 。

「オピオイド」は聞きなれない単語かもしれません。世の中では麻薬と呼ばれることが多いでしょう。

オピオイドは薬の作用上の分類であり、麻薬というのは法律上の分類です。

 

麻薬とは薬の作用によって分類されている名前ではなく、法律的な扱い上厳重な管理をするために「麻薬」と呼ばれているのです。

麻薬とは不適切な使い方をすると依存症となり、急に止めると死んでしまうことがある薬の総称です。

「麻薬」には気持ちよくなる薬とか依存症になる、中毒になる、寿命が縮まる、死ぬときに使う薬など悪いイメージを持っている人がいます。

モルヒネや麻薬に対する誤解を解き、麻薬に対する抵抗感が減らすために、もう少し詳しい解説をさせてください。

 




モルヒネを始めると中毒になるか心配??

多くの人がもっているモルヒネに対する悪のイメージを払拭するのに難儀をしたという方やお医者さんも多いかもしれません。

「モルヒネ」を投与する前にしっかりと説明を受けていたのに、やっぱり使いたくない気持ちが先に立ち痛みを我慢している患者が多いと耳にしたことがあります。

 

納得してモルヒネの使用を開始した方や家族でも、容体が悪くなるとモルヒネが原因じゃないか?と疑問に思うようになることもあるようです。

「病気が進行すれば頭の状態が悪くなれば正気がなくなってくる」と説明されたことはすっかり忘れて、悪いイメージだけが頭に残るようです。

 

本人だけでなく家族もしっかり説明を受けてモルヒネを開始したのに、容態がが悪くなると「飲まされている麻薬のせいで、こんな風にねちゃっているのかねぇ」とご家族が質問してきたという話を聞きいたことがあります。

病気が進行すると頭の状態が悪くなり意識の状態が悪くなりますが、モルヒネの影響だけで正気が失われていると勘違いされることがあります。

確かに、モルヒネのような麻薬性鎮痛剤は投与するとボンヤリする作用があります。オピオイド開始による軽度の意識障害や眠気はよくある合併症です。中毒では有りません。

 

元気なときは眠気や軽い意識障害ていどの副作用にしか見えなくても、癌末期でお別れが近くなってからモルヒネを使うような場合は、副作用も強く表れてしまうことがあるようです。

適切に使用しているモルヒネが命を縮めたりすることはあり得ません。

依存症になるのでは?という心配をさせれる方も多いようです。

 

ある統計によると30%ぐらいの人はモルヒネなどの医療用麻薬で中毒になる心配をしております。

もしあなたがモルヒネに対して、中毒になる心配をされているのであれば、普通のことです。みんなが疑問に思うことを感じているだけなので、心配要りません。

 

ここで疑問を解消し、正しい知識を入れてください。

お医者さんが適切に麻薬性鎮痛薬を処方すれば、中毒や依存症になることは有りません。

なぜなら、痛みに会わせて、少量から始めることになっているからです。痛みが強ければモルヒネの量を増やすという方法で調節します。

決してはじめから大量のモルヒネを投与することは有りません。そのような間違った治療法はほとんど行われていません。

モルヒネの為に頭がおかしくなったりすることがあると心配されている方もいるかもしれません。

頭がおかしくなるという表現が正しいとは言えませんが、モルヒネのためにボンヤリしたり,せん妄になることは有るようです。

体の状態が良ければ、眠気やせん妄は数日から一週間ぐらいでよくなります。

 




寿命が短くなるという誤解

病気の進行に伴う意識状態の低下とモルヒネの副作用であるボンヤリする作用が同時に現れるため、どうしてもモルヒネが悪者になりがちになります

少し前までは、モルヒネを死の直前だけに使うケースがあったようです。

死ぬ間際になり、がん患者が痛みや苦しさで悶絶し意識がもうろうとなった時点でモルヒネを投与していた時代が有ります。

 

今は違います。ガンの痛みのコントロールはある程度確立されており、死ぬ間際から使うような薬では決して有りません。

モルヒネ投与の遥か先に「死」があることは否定できません。末期がんで一度始まったモルヒネなどのオピオイドが死ぬまで中止されることは少ないでしょう。

 

モルヒネを飲まないからといって、余命が長くなるものではありません。

モルヒネ等の医療用麻薬を使って痛みのコントロールをした方が寿命が長くなったという有名な報告があります。(Bercovitch, Michaela, and Abraham Adunsky. “Patterns of high‐dose morphine use in a home‐care hospice service.” Cancer101.6 (2004): 1473-1477.)

 

余命は伸びないけど、生活の質は上がりましたという報告も有ります。(Kelley, Amy S., and Diane E. Meier. “Palliative care—a shifting paradigm.” (2010): 781-782.)

痛い苦しいと言って過ごすのではなく、穏やかに過ごすほうがいいに決まってますよね。

 

まとめ

自分らしい生活を送るためにもモルヒネに対する正しい認識を持って、適切な痛みの治療を受けてください。

ここまで読んでいただきありがとうございます。




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