転移は様々な苦しみを生じる
ガン細胞が元にあった場所とは違うところに移動することを転移といいます。
大腸ガンのガン細胞が肝臓にて増殖をはじめたら「大腸ガンの肝転移」といいます。大腸癌が大脳で増殖を始めたら「大腸ガンの脳転移」といいます。
基本的に転移したガン細胞は元あった場所に比べ増殖速度は速くありませんが多発します。1つの細胞だけが転移すると考えられず、1つ転移が見つかればミクロ単位、細胞転移ではたくさん転移していると考えるのが普通です。
転移による症状は、転移したガン細胞が大きくなり、転移した場所の臓器の機能を奪っていくことで症状を生じます。肺に転移すれば、肺の重要な役割である酸素を血液に取り込むという仕事を奪ってしまうのです。
転移したガンの塊が大きくなることで周囲の組織を圧迫し痛みを生じることもあります。
この記事では様々な部位へ転移で生じる症状について説明させていただこうと思います。
肝臓への転移
機能を奪う例として肝臓への転移を考えてみます。
肝臓にガンが転移し、転移したガンが大きくなるにつれて正常な肝臓の機能を奪っていきます。肝臓の正常な部分を奪いながらガンは大きくなります。肝臓では生きてゆくために様々な機能をしています。
肝臓の機能と言えば、体に不要なものや有害なものを分解したり、排泄する機能、必要なたんぱく質、酵素などを合成する機能、血液を止めるためのフィブリノゲンを作ったりと肝臓には生きてゆく為の機能が沢山あります。
肝臓の転移が大きくなり、正常な肝臓が少なくなれば、生きてゆくために必要な肝臓の機能が低下していくわけです。。
正常な場合肝臓というのはかなり余裕があり、少しぐらい減ったぐらいでは命にはかかわりません。
手術では肝臓を1/3ぐらい取ってしまうこともあります。
ガンが大きくなり肝臓を半分以上占拠するようになると、肝不全の症状が出るといわれています。肝不全とは肝臓の機能が低下し、症状が現れている状態です。不要なものを分解できなくなると体に不要なものがたまるようなります。
不要なものが溜まる(毒素が溜まる)状態といえばイメージが沸きやすいのではないでしょうか。
最初に現れる肝不全の症状は、すぐに疲れてしまうことです。
また、血液を固まらせる物質も肝臓で作られているため、出血がおきやすくなったり、血が固まりにくくなります。
その他にも、分解する機能が低下すると、アンモニアが分解できなくなり、頭の働きが悪くなります。たんぱく質を消化するとアンモニアが生成され、普段であれば肝臓で尿素まで解毒し尿中に排泄しています。
しかし肝臓の機能が低下すれば、アンモニアが体にたまるようになり、頭の機能を障害するのです。
肝性脳症といわれる状態です。
肝性脳症が酷くなると、意識状態が悪くなり、うめいたり、理屈に合わないことを言ったり、寝てばかりになります。
肝性脳症は相当肝臓の機能が低下しているサインであり、一ヶ月以内にお別れが来る可能性が高いと考えています。
- 疲れやすい
- 肝性脳症
- その他色々
肺転移
もう1つ機能を奪う例として肺転移があります。肺への転移が増えれば、健常な肺組織が減ってゆくわけですので呼吸が不十分になってゆきます。
少し動いただけで苦しくなったり、酷くなると何もしていないのに苦しくなります。
がん細胞が肺の半分ぐらいを選挙するようになると、呼吸の苦しさを感じるようになります。
- 呼吸苦や咳
脳転移について
脳への転移が生じれば、脳の機能を奪っていきます。
ものを見ることを支配する部分に転移が生じれば、目が見えなくなります。
運動を支配する部分に転移すれば、半身不随になります。
話をする機能を有するところに転移すると話ができなくなります。
飲み込んだりする機能を支配する部分が犯されれば、飲み込む能力が落ちてしまいます。
飲み込みが悪くなると、食べたものや飲んだものが胃に入らず、間違って肺に入ってしまいます。
食べたものが肺に入るということは、口の中のばい菌も肺に入ることとなり、誤嚥性の肺炎を引き起こします。誤嚥性肺炎は、呼吸筋の機能が低下し、息を吸う力や吐く力が弱くなっている患者の場合、致命的になることも少なくありません。
また脳は頭蓋骨に囲まれているため、ガンが大きくなりすぎると正常な脳を圧迫していきます。
脳全体が圧迫されると、全体的に脳の機能が低下し、意識状態が悪くなり、正常な判断が出来なくなります。
脳全体の圧迫の程度によって意識状態が変化します。
強く圧迫されればこん睡状態になります。
弱い圧迫では頭痛を生じたり、吐き気を催したり、軽い認知症状が出たりします
脳への転移が原因でケイレンを生じることもあります。
脳への転移はいろいろな障害を引き起こす可能性があります。
しかし、脳への転移をMRIやCT画像では認めるけれども、全く症状が無い場合もあります。
- 喋れなくなる、麻痺などいろいろな症状(巣症状)
- 誤嚥→誤嚥性肺炎
- 意識障害や吐き気
- 痙攣
骨転移について
背骨、腰骨、腕の骨、足の骨など何処の骨にでも転移する可能性があります。
骨に転移すると正常な骨組織が少なくなるため骨折しやすくなります。骨折したことがある方はご存知だと思いますが、骨折の痛みはとても強く、冷や汗が出るほど痛いです。
じっとしていれば、全く痛くないのですが、少し動くだけで激烈に痛くなります。コントロールが難しい痛みだと言われています。
また背骨に転移し、背骨が圧迫骨折を起こすと脊髄損傷を生じ、下半身が動かなくなったり、首より下が動かなくなる場合もあります。
胸より下で脊髄損傷を生じると下半身が動かなくなります。
首のところの骨が折れれば手足が動かない状態になるかもしれません。
背骨の中には脊髄という大切な神経の通り道があり、転移が大きくなり脊髄を圧迫するようになると痛みや痺れ、運動障害を生じます。
骨への転移で問題となるのは、痛みを伴うという点です。
骨転移の安静時の痛みはコントロール可能な痛みですが、体を動かしたときの痛みはなかなかコントロールが出来ません。
逆を言えば、体を動かすと痛むが安静時は痛みなく過ごせる場合が多いということです。
しかし、ひとたび骨折すると痛みが増悪し、動かすたびに痛みが増強し、コントロールが難しい痛みに変わる場合もあります。
- 痛み
- 骨折
- 脊損
まとめ
転移は何処にでも生じます。何処へでも転移するので症状は様々で、想定が難しいのです。
個々でも述べましたが、転移の中でも、命や生活に大きくかかわる転移の場所は「肝臓」「脳」「骨」「肺」です。
進行ガンという病気は感染症や骨折などのように完全に治癒することはありません。
抗ガン剤の治療の大きな目標は、ガン細胞が増えなければ症状は出ないわけなので、ガン細胞が出来るだけ小さくなるように、増えないように治療をしていますよね。
ガン細胞が増殖し、大きくなれば正常な臓器を圧迫し、症状が出てしまうので、抗ガン剤を使って、ガン細胞を減らし、増えないようにしているのです。
最近は抗がん剤の使い方が進歩し、新しい薬も発売され、ガンを抑えることが出来るようになっています。
しかし、抗ガン剤治療の効果がある期間が長いほど、延命できますが、ガン細胞が他の臓器に転移するリスクも高くなります。
転移の症状で困るガンは、乳ガン、大腸ガンや甲状腺ガンなどゆっくり進行するガンです。
ガンと診断されてから終末期とよばれる状態までの期間が長いので、転移しているケースが多くなります。
乳ガンはガン自体が大きくなり悪液質で死亡することもありますが、乳ガン患者の多くは脳転移や肝臓、肺などへ転移したガンが大きくなり致命的になる可能性が高いようです。
最近は生存期間が延長した分、転移するリスクが増えている
最近は新しい分子標的薬や抗ガン剤の効果的な使い方も研究され、延命できる期間が長くなってきています。これは非常にすばらしいことです。
しかし、ガンと診断されてからの生存期間が長くなるので、転移のリスクは増えてくると考えています。
骨への転移による痛みのコントロールは難しく、動くと強い痛みが生じます。そのため、動けなくなり、生活の質が落ちてしまいます。
脳転移や半身不随になって失われた機能や人格はどうにもならず、苦痛を軽減することが難しいようです。
転移に関しては症状が多彩すぎてここだけでは説明できない部分もありましたが参考にしていただければ幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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