最期の時間を知る手がかり。集中力の変化に、どう気づき、どう寄り添うか




 

余命のサイン:集中力の低下

 

がんが進行し、最期の時が近づくと、体だけでなく心にも変化が訪れます。特に集中力(注意力)の低下は、余命が一ヶ月を切ったあたりから顕著になり、おおよその残り時間を推測する一つの手がかりとなります。

最期の一ヶ月:集中力が語るもの

がんが進行して体が弱ると、それに伴って頭の働きも衰えていきます。健康な時に感じる「頭が冴えている」時間が短くなり、何をしても集中力が続かなくなります。この変化は、患者さん自身の自信を失わせ、周りの人からは「急に頼りなくなった」ように見えるかもしれません。話を聞いてもうわの空だったり、表情が乏しくなるのも、周囲への注意力が低下している結果と考えられます。

この状態になると、以下のような変化がみられます。

  • 新聞や本が読めなくなる:集中力が続かず、文字を追っても内容が頭に入ってこないため、読みたいという意欲も薄れていきます。まるで難しい文章を読んでいるかのように感じます。
  • テレビが楽しめなくなる:「テレビの音がうるさい」「見ていられない」と感じることがあります。これは、情報そのものを処理するのが難しくなっているからです。

これらの変化は、患者さんの興味や好奇心が薄れていくことにもつながります。しかし、これは決して投げやりになっているわけではありません。最期の旅路を穏やかに迎えるための、自然な心の準備なのです。

注意 今まで見ていたテレビを見なくなるとか新聞を読まなくなるなどの症状が現れたら、残されている時間は一ヶ月を切っていると覚悟しなくてはいけません。

 

余命一ヶ月、容態の急変:集中力の低下が示すサイン

がんが進行し、集中力(注意力)が低下し始めた頃から、容態は急激に悪化する傾向にあります。これは、全身の衰弱が脳の機能に影響を与え、今までできていたことが急にできなくなる時期と重なります。

この時期の集中力の低下は身体の機能が全体的に衰え、脳に十分なエネルギーが届かなくなっているサインです。

  • 筋力低下の加速: 集中力が低下するのと同じ頃、筋力も急速に落ちていきます。その結果、自力での移動や食事、身の回りのことが困難になり、家族の支援が不可欠になります。
  • 生前準備のタイムリミット: 集中力が低下すると、複雑な思考や判断が難しくなります。そのため、生前準備や終活は、この時期に入る前に済ませておくことが大切です。

集中力の低下は、最期の旅路が間近に迫っていることを示しています。このサインに気づくことで、患者さんとご家族は、残された時間を大切に過ごすための心の準備を始めることができます。

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余命2〜3週間:つじつまの合わない言動が示すサイン

がんがさらに進行すると、話のつじつまが合わなくなったり、変なことにこだわり始めたりすることがあります。これは、頭の機能が低下しているサインです。

具体的な変化

  • 時間や日付の間違い: 日付や時間を間違えることが増えます。
  • 急な仕事の話: 関係のない場面で、突然仕事の話を始めることがあります。

これらの言動は、家族から見ると「寝ぼけている」とか「認知障害が始まった」ように感じるかもしれません。もし、話のタイミングがおかしいなと感じたら、それは残された時間が2〜3週間であることを示していることが多いです。

この状態は、医学的には「短期記憶の障害」や「意識状態の悪化」と表現されます。

しかし、患者さんの人格は保たれているため、自分の言動を否定されると、怒り出すこともあります。弱っているように見える反面、怒りっぽくなるのは、ご本人が混乱し、不安を感じているからかもしれません。この時期は、患者さんの言動を否定せず、優しく受け止めてあげることが大切です。

見えないものが見える(幻覚)

さらにガンが進むと幻覚などが見えたりします。

幻覚が見えるということは意識状態が悪くなっています。

おそらく残されている時間は一週間以内であり、近くお別れが来る可能性が高いです。夢と現の間をさまよっている状態です。

頭の働きが低下し、あらぬものが見えたり、あらぬところにいる様な感覚になることをせん妄といいます。

専門的用語で終末期せん妄といいます。

終末期せん妄とは多くのガン患者が終末期に生じる頭の機能の低下です。頭の機能の低下はすなわち全身状態の悪化を意味します。

さらにガンが進行し、声をかけないと目を開けないような意識状態になれば、残されている時間は2~3日でしょう。

声をかけても目を開けないような意識状態になれば残されている時間は1~2日でしょう。

 

「あとどれくらい生きられるのか」を推し量ることは、現実と向き合うことであり、非常に辛いかもしれません。

しかし、がんの終末期には、多くの患者さんに「終末期せん妄」という、つじつまの合わない言動や幻覚が現れる自然な経過が見られます。

周囲から見ると、患者さんが苦しんでいるように感じ、胸が締め付けられる思いをすることもあるでしょう。場合によっては、患者さんの苦痛を和らげるために、意図的に眠らせる処置を行うこともあります。

せん妄に対する特効薬はありませんが、大切なのは「寄り添うこと」です。患者さんの言動を否定せず、優しく受け止めることで、本人の苦痛は和らぎます。

つじつまの合わないことを話す姿は寂しく感じられるかもしれませんが、これもまた、がんが最期を迎える自然な過程です。

病気の進行度から、今後どのような症状が現れるかを知っておくことで、心穏やかに看取りの時を迎えられるはずです。

例外はあります。脳転移がある方は必ずしもこのような経過にならないので専門家に質問してください。脳腫瘍の末期症状

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

参考文献

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