頭の機能低下と体重減少は末期ガン患者の共通症状




終末期の患者にみられる共通した症状

最後の1ヶ月の余命を判断するとき一番重要視する症状は頭の状態(覚醒の程度)痩せの程度(筋力の低下)です。

この二つの症状はどんな癌でも共通して現れてくる末期の症状です。頭の機能低下は最後の1ヶ月まで現れませんが、体重減少はもっと前から始まっているでしょう。

ガンというと痛みとか息苦しさとか吐き気など辛い症状を思い浮かべると思いますが、末期がん患者でもっとも共通する症状は筋肉量の低下と痩せです。

末期がん患者の姿を思い浮かべてみてください。おそらく痩せこけた姿を思い浮かべるのではないでしょうか?

頭と痩せの2つの症状に注目すれば、予後の予測がつくという話をこの記事では詳しくしていきます。

終末期の患者の頭の症状や痩せ具合(悪液質)は全身の状態と相関する

余命が1ヶ月をきると、筋力低下が顕著になり、頭の症状が現れてきます。

体力の低下に合わせて、だんだん頭の機能も落ちてきます。まずは集中力が低下し、記憶力が低下し、覚醒している力が落ちていきます。

ガンによる脳の機能低下は脳梗塞のように片手が動かないとか、話しができないというような症状ではありません。。脳全体の機能の低下のため、覚醒状態が悪くなります。

がんによる頭の機能低下の症状は初めは自信がなくなったような感じがすることが多いようです。

頭の機能が低下するに従い、ぼんやりと過ごすことが多くなります。朝起きたようときのようなすっきりしない感じが、一日のうち何度か現れるようになり、頼りない感じになります。

頭の機能と筋力低下、この二つの症状が残された時間と関連が強いと言われています。

悪液質による筋力低下の生活への影響

全身の痩せ、筋力の低下も徐々にすすみ、余命一ヶ月になると日常生活に支障が現れます。

筋力低下により、歩行が遅くなり、遠くに移動するために杖や車いすなど補助が必要になります。

余命一ヶ月未満になると家の中の移動ですら不自由になります。

トイレに行きたいと思ってから、トイレに行き着くまでの時間が長くなるため、オシッコやウンチを失敗してしまいます。

悪液質による生命活動への支障

筋力低下が生じるのは手足だけではありません。生きるために必要な筋肉が減ることが大きな問題なのです。

ご飯を食べる速度も遅くなります。唾液の分泌が減り、食道やのどの筋肉が減るため、固いものを飲み込みづらくなるためです。

筋力低下により、おかゆなど軟らかいものを好むようになるのです。

オシッコやウンチを我慢するための尿道括約筋や、肛門括約筋などの筋力も減るため失禁が多くなります。

 

全身の筋肉量が低下し、日常生活に支障をきたすようになりだした頃から頭の症状が出てきます。

呼吸ための筋肉が低下し、酸素を十分取り込めなくなることが、頭の症状が出てくる1つの原因だからです。

まだ、自分の足の力で買い物などの外出できるような人で、頭の症状がでることは少ないということです。

痩せ(悪液質)と頭の症状以外は必ず生じる症状ではない

ガンのほかの症状である痛み、息苦しさ、腹水、吐き気などの症状は必ずしも生じる症状ではありません。

あまり知られていないことですが、1−2割ぐらいの人はそれほど強い痛みを感じることなく天命を迎えるのです。

 

ご高齢の方は、息苦しい感じもまったく感じないまま終末期を過ごす場合もあります。

ガンと知らず、まるで老衰のように天命を迎えるご高齢の方もいるのではないでしょうか。

病状に合わせ、活動量が減ってゆくため息苦しさを感じないのだと思いますが、ご高齢の方は、元々活動量が少ないことも息苦しさを生じさせない理由だと思います。

 

ガンになって痩せない方はほとんどいません。

ガンによる異常代謝の影響により、生活に必要な筋力まで失われると,飲み込む筋力が弱まり誤嚥を生じ肺炎になったり,咳き込む筋力が弱まり、痰の排泄が出来ずに痰詰まりになる方もいます。

ガンの最後は、筋力が弱まってゆくことが原因で、誤嚥や痰詰まりが生じ、肺炎や窒息を起こして、天命を迎えるのです。

 

悪液質による痩せによる筋力低下こそがガン患者を苦しめ、命に関わってくる根源的な原因なのです。

 

まだ痩せていない方なら、痩せていくことをできるだけ防ぎ、痩せてから穏やかに過ごせるように医療機関を利用する準備をしたり、家族による助けを受ける準備をしておくことができます。

もし痩せが進行してきている方であっても、今後生じるであろう症状に対する準備をしておくことで、苦痛を減らすための準備が出来ると思います。ヒントがこのサイトにはあると思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。余命と悪液質に関する記事を多数アップしてありますので、お役立てください。

参考文献
緩和医療学会 がん疼痛の薬物療法のガイドライン 苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン 聖隷三方原病院 予後の予測 森田達也(編) 2016 続・エビデンスで解決!緩和医療ケースファイル 大津秀一(著)2015 Dr.大津の世界イチ簡単な緩和医療の本―がん患者を苦痛から救う10ステップ 淀川キリスト教病院(著)2007 緩和ケアマニュアル Evans C, McCarthy M. Prognostic uncertainty in terminal care: can the Karnofsky index help? Lancet 1985; 1:1204. Maltoni M, Nanni O, Derni S, et al. Clinical prediction of survival is more accurate than the Karnofsky performance status in estimating life span of terminally ill cancer patients. Eur J Cancer 1994; 30A:764.  Gripp S, Moeller S, Bölke E, et al. Survival prediction in terminally ill cancer patients by clinical estimates, laboratory tests, and self-rated anxiety and depression. J Clin Oncol 2007; 25:3313. Zubrod GC, Schneiderman M, Frei E, et al. Appraisal of methods for the study of chemotherapy in man: comparative therapeutic trial of nitrogen and mustard and triethylene thiophosphoramide. J Chron Disease 1960; 11:7. Viganò A, Dorgan M, Buckingham J, et al. Survival prediction in terminal cancer patients: a systematic review of the medical literature. Palliat Med 2000; 14:363. Morita T, Tsunoda J, Inoue S, Chihara S. The Palliative Prognostic Index: a scoring system for survival prediction of terminally ill cancer patients. Support Care Cancer 1999; 7:128. Subramaniam S, Thorns A, Ridout M, et al. Accuracy of prognosis prediction by PPI in hospice inpatients with cancer: a multi-centre prospective study. BMJ Support Palliat Care 2015; 5:399.




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