ガン終末期と輸血について




ガン末期はほとんどの人は貧血になる

ガン末期は体中の筋肉と脂肪が減少するため痩せています。

多くの末期がん患者は食欲が落ち、栄養状態が悪くなることは悪液質が原因でしたよね。

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筋肉や脂肪が分解されるのと同じように、血液も作られにくくなっています。

そのため多くの末期がん患者の血液検査の結果は貧血です。

しかし、活発に体を動かさないので、貧血であっても強い貧血の症状は生じません。

多くのガン患者は軽度の貧血状態ですが、ほとんど困りません。

全く症状がないわけではありません。息苦しさ体のだるさのような症状の一因は貧血にあると言われています。

強い貧血になると息苦しさや耐え難いだるさが生じますが、末期がん患者の場合、貧血だけが原因ではありません。だるさという症状は複雑です。

終末期の息苦しさの原因は胸水や肺炎、肺がんの炎症、癌性リンパ管症などがほとんどです。末期がん患者で息苦しさを訴えている人に貧血を輸血で治療しても、息苦しさが治らない場合が多いからです。

終末期に輸血をしてもいいのか?

だるさ対し、輸血で治療すると、気分がスッキリし、元気になる場合があります。輸血がだるさに対し、一定の効果があるのは間違いなさそうです。

終末期の症状緩和で劇的に効く三種の神器といえば、モルヒネなどのオピオイド製剤ステロイド輸血だと思います。

 

輸血の種類を知っておこう

輸血には主に、赤血球液の輸血と血小板の輸血、血漿の輸血があります。

ガン末期に輸血するのはおそらく赤血球液でしょう。

赤血球液とは正式には、「赤血球濃厚液」といいます。献血した血液は血漿と赤血球成分に分離します。赤血球成分は沈殿します。沈殿した部分を集めたのが赤血球液です。

 

終末期の患者に赤血球液を輸血をすると貧血が改善し、一時的に息苦しさやだるさなどの症状が改善するわけです。

癌の病状が進行すると赤血球液の輸血の効果が乏しくなります。状況や病態によっては輸血しても楽にならないケースもあり、ケースバイケースのようです。

延命効果はあるのか

終末期の輸血に関する論文もいくつかあります。

輸血は全身倦怠感のような症状を軽くする可能性ありますが、延命効果はないというのが一般的な見解のようです。

緩和医療学会は輸血に関するガイドラインは作成しておらず、患者自身の病状や病気の受け止め方、症状の程度、医師の見解、輸血という献血者の意向、倫理的な問題など、判断するべき側面がたくさんあり、簡単に決められないということでしょう。緩和医療学会ガイドライン:https://www.jspm.ne.jp/guidelines/

厚生労働省の輸血指針に、悪性腫瘍からの急逝出血に対する赤血球液の輸血について記載や化学療法に伴う貧血に対しての適切な使用方法についての記載はありますが、がん悪液質の貧血に対しての記載はありません。

ダメとも書いてありません。

以前は不適切な使用法に末期がん患者と記載してあったようです。(平成24年厚生労働省血液製剤の使用指針)

http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/yuketsuj_1705-153.pdf
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/dl/tekisei-02.pdf平成24年改定版

末期がん患者の単なる時間的延命に対し、血小板輸血はするべきではないと記載してあります。

終末期の患者に輸血をすることは倫理的に難しい問題

潜在的な出血があり、貧血になっている方や、癌からの少量の出血が止まらず、貧血に陥ってる場合に赤血球液の輸血を行うと、一時的に元気になります。

根本的な解決なっていないため、何度も輸血を行うことになります。

倦怠感の改善や呼吸苦の効果が短期間(効果が2週間未満)のような場合は、輸血は控えるべきという意見もあります。

寝たきり状態になった方に輸血をしても、倦怠感改善や呼吸困難感改善のような効果は得られにくいし、建設的な治療ではないからです。

まだ自分で自分のことが行えるような時期(余命が一ヶ月以上ある場合)は、輸血行うとQOLが改善し、人としての尊厳が回復するという報告があります。

先程も述べましたが、輸血をしたら誰でも効果が有る訳ではないようです。

癌の痩せ、悪液質の進行による貧血に対する赤血球液の輸血を行うと、症状が改善する場合もありますが、効果がない場合もあります。

輸血の原料は人の血です。善意の献血により作られています。そのため有限であり、高価です。280mlの赤血球液は16,805円します。

また輸血製剤は交通事故や手術、産科出血など切迫した命の危機にさらされてる人のために在庫を維持しておかなくてはなりません。

末期がん患者には輸血は控えるべきだと言われていました。

現在であっても短期間の効果しか得られないのであれば輸血は控えるべきという意見があります。終末期の症状緩和に使うのは生命の生産性がないという意見からです。

参考:平成17年輸血指針http://www.jrc.or.jp/vcms_lf/iyakuhin_benefit_guideline_sisin090805.pdf

末期がん患者に対する輸血には簡単に結論は出せません。しかし、輸血をして症状が緩和している人がいるというのも事実です。

輸血には重い副作用がありますが、必ず生じるものではありません。頻度もそれほど高くありません。副作用を危惧して輸血をためらう必要はないかもしれません。

まとめ

終末期患者に対する輸血は一定の効果を得られる可能性があります。

しかし、貧血があるから必ず輸血する必要もありません。

また輸血には副作用があります。熱がでたり、アレルギー反応がでるということは知っておくべきでしょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

参考文献
輸血が悪性疾患に伴う症状を改善し、主観的な幸福感を改善する可能性がある
Gleeson, Catherine, and David Spencer. “Blood transfusion and its benefits in palliative care.” Palliative medicine 9.4 (1995): 307-313.
Chin‐Yee, Nicolas, et al. “Red blood cell transfusion in adult palliative care: a systematic review.” Transfusion 58.1 (2018): 233-241.