腹水が認められたら余命はどれぐらい残されているのか?

末期の腹水や胸水は悪液質が原因の1つです。腹水の増加はガンが進行してきている兆候と言えるでしょう。

腹水や胸水が増加している原因の一つに心不全や肝硬変などもありますが、ガン患者の場合多くは悪液質か癌性腹膜炎が原因です。

実は、正常であっても少量(100ml未満)の腹水は常に存在しており、生産と吸収のバランスが取れています。ガン末期の腹水はこのバランスが崩れてしまった結果です。

腹水の原因についての詳しい記事はコチラを参考にしてください

腹水が生じやすいガン

腹水が生じやすい癌は横隔膜より下のガンです。その中でも、卵巣がんや子宮癌、胃がん、膵がん、結腸癌が8割を占めます。

肝臓への転移が大きくなり腹水を生じる場合もあります。

とても重要なことですが、腹水があると診断されたときには、既に病気がかなり進行してます。生産と吸収のバランスは崩れており1リットル以上の腹水がたまっています。

腹水が数100ccたまっているだけでは症状はほとんどなく、見た目もそれほど目立ちません。CTで検査すれば確認できる程度です。

「腹水でお腹が苦しいなぁ」と感じる時は、かなり進行してしまっているのです。

腹水が認められてからの余命

腹水でお腹がパンパンで痛苦しい感じがするのであれば、余命は一ヶ月未満が多いようです。

2000年のデータですが、腹水と診断された後の余命の中央値膵がんで11週、卵巣がんで31週、胃がんで11週、悪性リンパ腫で58週と言われています。

中央値とは全体の真ん中の数値です。例えば,「1,2,3,4,20」という5つの数値の中央値は3です。平均値は6になります。中央値はとんでもなく大きな数値に左右されない統計学的な表し方です。

化学療法が効かない場合、腹水が認められたら余命は2〜3ヶ月が多いようです。化学療法の効果が続けば、当然余命は長くなります。

根本的に腹水減少に効果があるのは化学療法です。化学療法でガン細胞を減らさないと腹水は減りません。

腹水を抜く,輸液を少なくする、尿を出すなどの方法がありますが、症状を軽くする緩和的な治療です。

 

腹水を抜くだけの余力がなくなった

腹水を抜いている最中に血圧が異常に低下したり、意識がもうろうとしてしまうようになると、腹水を抜くことが出来ません。腹水を抜くという医療行為自体が命を奪いかねないからです。

腹水を抜けなくなったとお医者さんが判断したということは、病状が悪化しており、お別れが近いと思ってください。腹水を抜いている途中で血圧が下がったり、気を失うことがある場合も、おそらく二週間以内でお別れになるでしょう。

 

腹水を減らしたいと願う気持ちは共感できますが、腹水を減らしても病気が良くなるわけではありません。腹水のコントロールが難しくなっているというのであれば、残された時間を大切にする時期だと判断する方が賢明です。

緩和的な治療をすれば、辛い腹水の症状が軽くなり、普段の自分に近い状態で過ごせるようになります。

健康保険の範囲内で使用されている化学療法が効かない腹水が現れたら、残された時間と向き合い、穏やかに過ごすための治療法を選択してゆくことが大切だと思っています。

病気に負けたくない、諦めたくないという気持ちは痛いほど理解できます。奇跡が起きる可能性は否定しません。しかし、現実的には患者とその周囲の家族らに残されている時間はそれほど長くありません。

効果の薄い治療に、わずかな希望を持ち、努力し、貴重な時間を費やし、打ちひしがれてゆく姿は見ていられません。

この記事を読み、つらい気持ちになってしまった方がいるかもしれません。大きな決断をしなくてはならない時、自分に合った選択を決断する参考にしていただきたいと思い書かせていただきました。

腹水、胸水、浮腫に関する記事がございますので参考にしてください。

腹水、胸水、浮腫についての記事

 

参考文献
荒金秀樹 2014 悪液質とサルコペニア リハビリテーション栄養アプローチ
特定の病態に対する治療 – 日本緩和医療学会
Ringenberg, Q. Scott, et al. “Malignant ascites of unknown origin.” Cancer 64.3 (1989): 753-755.
Runyon, Bruce A. “Malignancy-related ascites and ascitic fluid” humoral tests of malignancy”.” Journal of clinical gastroenterology 18.2 (1994): 94-98.
Sadeghi, Babak, et al. “Peritoneal carcinomatosis from non‐gynecologic malignancies.” Cancer 88.2 (2000): 358-363.
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終末期、緩和ケア、死生観の研究をしてます。終末期を穏やかに過ごすためには医療サイドと家族サイドの見解の一致が不可欠です。死への知識を深め、家族の力をアップさせることが終末期の苦痛を減らす大きな要素だと信じております。