腹水がたまってきたら、残されている時間はどれぐらいなのか?




体は痩せてきたのにお腹がぽっこりしてきた。これって腹水ちゃうの???

医者に腹水がたまってきたと言われ、不安になっている方や家族は多いです。

「お腹の水を抜けば、病気が良くなるんじゃないかな?」なんていう誤解をされている方も少なくありません。

「そもそも、腹水ってなんなの?」

腹水は一般的に使われれる言葉ではあるけど、なぜ腹水が生じるのか?どれぐらい病気が進行してきたのかとか、治るのか?など詳しい知識を知らないままの方は少なくありません。

お腹に水が溜まると一般的に言われてる腹水について、少し理解を深めていきましょう。腹水について正しく理解することは辛いことかもしれません。でも、残された時間がどれぐらいなのかということを見誤らなくて済むのではないかと、わたしは信じています。

まずは腹水について少し理解し、残された時間がどれぐらいなのかということがわかっていただけたらと思います。

腹水の原因について

末期の腹水や胸水が生じてしまうのは、栄養状態の破綻が原因です。栄養状態の破綻と言われるとちょっと仰々しいかもしれませんが、食べても食べても筋肉にならないし、食べているのに体重が落ち、ガリガリに痩せていく状態になっているってことです。

大切な点
たべてもたべても体力は戻らないし、体重が落ちてしまう状態に体がなってしまっているサインが腹水です。
腹水の増加はガンがもう後戻りできないほど勢力を伸ばしてきている兆候なのです。まずは後戻り出来ないという点を理解し受入れなくてはなりません。

もしかしたら、腹水の原因がガンでない場合もあるってことをご存知のかたもいるかも知れません。

たしかに、腹水や胸水が増加している原因の一つに心不全や肝硬変などもありますが、ガン患者の場合多くは悪液質癌性腹膜炎が原因です。

たびたび出てくる悪液質という難しいワードですが最初に述べた、栄養状態の破綻と異常な痩せ傾向を悪液質といいます。

腹水、悪液質、癌性腹膜炎についてもっと知りたい方は、この記事の下の方にある関連記事にリンクがありますので参考にしてくださいね。

実は、正常であっても少量(100ml未満)の腹水は常に存在しており、生産と吸収のバランスが取れています。腹水自体は「悪」ではなく、吸収と生産のバラスが破綻してしまっていることが問題なのです。

がん細胞の勢いが強くなると、栄養状態が悪くなり吸収ー生産バラスが破綻し、元には戻れなくなってしまっているのです。

腹水の原因
悪液質、癌性腹膜炎など

リンパ節転移とかでも腹水がたまる原因になりますので、「など」とさせていただきましたが多くは悪液質と癌性腹膜炎が原因です。

腹水が生じやすいガン

発生する癌の場所によって腹水ができやすいタイプのガンがあるんです。

脳腫瘍では腹水は生じにくいですし、肺癌で腹水でこまったという話はあまり聞きません。

腹水が生じやすい癌は横隔膜より下のガンです。ちなみに横隔膜は肋骨の下のほうにくっついていて、肺を取り囲んでいます。しゃっくりの原因となる呼吸するときに使う筋肉です。

腹水を生じる具体的な元の名前をあげると、卵巣がん子宮癌、胃がん、膵がん、結腸癌です。この5種類で腹水の8割を占めます。

肝臓への転移が大きくなり腹水を生じる場合もあります。

何度も言わせてください。腹水があると診断されたときには、既に病気がかなり進行してます。生産と吸収のバランスは崩れており1リットル以上の腹水がたまっていると言われています。。

腹水が300〜500ccたまっているだけでは症状はほとんどなく、見た目もそれほど目立ちません。CTで検査すれば確認できる程度です。

「腹水でお腹が苦しいなぁ」と感じる時は、かなり進行してしまっているのです。

お腹がぽっこりしてきた原因が腹水だと診断されたときから、腹水をなんとかしようとしても手遅れだと思っていただけたでしょうか?

腹水が生じやすいガン
お腹で発生するガン

腹水が認められてからどれぐらい生きられるの?

ここからが本題ですね。腹水と診断されたからどれぐらい生きられるのか?

大変厳しい数値なので、驚かれると思います。

2000年のデータですが、腹水と診断された後の余命の中央値膵がんで11週、卵巣がんで31週、胃がんで11週、悪性リンパ腫で58週と言われています。

中央値とは全体の真ん中の数値です。

例えば,「1,2,3,4,20」という5つの数値の中央値は3です。平均値は6になります。中央値はとんでもなく大きな数値に左右されない統計学的な表し方です。

化学療法が効かない場合、腹水が認められたら余命は2〜3ヶ月が多いようです。化学療法の効果が続けば、当然余命は長くなります。

腹水でお腹がパンパンで痛苦しい感じや腹水でお腹が重く動けないという感じがするのであれば、余命は一ヶ月未満が多いように思います。

腹水で困りだしたら、もうそんなに長くないのです。この結果には短いと感じる方のほうが多いでしょう。

残念ですが、あまり時間はありません。逃げ出したりしたい気持ちもわかりますが、しっかりと前を向いた、生き方をしてほしいと思います。

腹水を減らす治療

先に述べましたが、根本的に腹水減少に効果があるのは化学療法です。

化学療法でガン細胞を減らさないと腹水は減りません。

栄養療法や民間療法は腹水が増えるのを遅くする効果があるかもしれませんが、減らすことは出来ません。

腹水を抜く,輸液を少なくする、尿を出すなどの方法がありますが、症状を軽くする緩和的な治療です。すぐに腹水が溜まってしまいます。

腹水が認められてからの余命
お腹で発生したガンなら2〜3週間

腹水を抜く体力がなくなったらどれぐらい生きられるの?

腹水で苦しくなると、多くの医療機関では腹水を抜くという医療行為をするでしょう。

腹水を抜いたときは、本当に楽になります。いままでポンポンに張っていたお腹がぺちゃんこになると、食事が出来たり、寝返りが打てたり、自分でトイレに行けたりできるようになります。

でも、腹水を抜いても、すぐに腹水は溜まりだします。翌日には同じようなお腹になっているなんてことも少なくないでしょう。

腹水がまた溜まるということは、体のどこからから腹水になるために水分が集まってきているわけです。腹水の成分は水だけではありません。タンパク質、電解質などいろいろな成分から腹水が出来ているので、腹水を抜いた文だけ、体力が奪われてしまうということは想像に難しくないと思います。

 

腹水を抜いている最中に血圧が異常に低下したり、意識がもうろうとしてしまうようになると、腹水を抜くことが出来ません。

腹水を抜くという医療行為自体が命を奪いかねません。

腹水を抜けなくなったとお医者さんが判断したということは、病状が悪化しており、お別れが近いということです。どれぐらい近いかというと週単位です。

一週間、一週間を大切に生きる病状になっていると心づもりをしてください。

腹水を抜いている途中で血圧が下がったり、気を失うことがある場合も、おそらく二週間以内でお別れになるでしょう。

腹水が抜けなくなったら
残されている時間は週単位

藁にすがるような治療は辛さが増える

腹水を減らしたいと願う気持ちは共感できますが、腹水を減らしても病気が良くなるわけではありません。

諦めず病気と戦うことが美徳とは思いますが、それは無知であり痛々しく感じるときがあります。

ワタシは常に思うのです、諦めることは不道徳ではありません。ガン終末期において、治療に対する諦めは辛い選択ですが、治りもしないのに治療を続けることはもっと辛い事かもしれません。

 

腹水のコントロールが難しくなっているというのであれば、残された時間を大切にする時期だと判断する方が賢明です。

緩和的な治療をすれば、辛い腹水の症状が軽くなり、普段の自分に近い状態で過ごせるようになります。その時間は短いかもしれませんが、少しでも穏やかに過ごすほうが賢明です。

健康保険の範囲内で使用されている化学療法が効かない腹水が現れたら、残された時間と向き合い、穏やかに過ごすための治療法を選択してゆくことが大切だと思っています。

病気に負けたくない、諦めたくないという気持ちは痛いほど理解できます。奇跡が起きる可能性は否定しません。しかし、現実的には患者とその周囲の家族らに残されている時間はそれほど長くありません。

効果の薄い治療に、わずかな希望を持ち、努力し、貴重な時間を費やし、打ちひしがれてゆく姿は見ていられません。

この記事を読み、つらい気持ちになってしまった方がいるかもしれません。大きな決断をしなくてはならない時、自分に合った選択を決断する参考にしていただきたいと思い書かせていただきました。

まとめ
腹水の症状が現れたら数ヶ月の余命です。

腹水、胸水、浮腫に関する記事がございますので参考にしてください。

腹水、胸水、浮腫についての記事

 

参考文献
荒金秀樹 2014 悪液質とサルコペニア リハビリテーション栄養アプローチ
特定の病態に対する治療 – 日本緩和医療学会
Ringenberg, Q. Scott, et al. “Malignant ascites of unknown origin.” Cancer 64.3 (1989): 753-755.
Runyon, Bruce A. “Malignancy-related ascites and ascitic fluid” humoral tests of malignancy”.” Journal of clinical gastroenterology 18.2 (1994): 94-98.
Sadeghi, Babak, et al. “Peritoneal carcinomatosis from non‐gynecologic malignancies.” Cancer 88.2 (2000): 358-363.

ABOUTこの記事をかいた人

死生観、終末期、緩和ケアの研究してます。死の過程の知識を深め、家族の力をアップし、医師とコミュニケーションを取り、医療サイドと家族サイドの見解を一致させることが終末期を穏やかに過ごす要素だと信じております。