悔いを減らした看取りのための具体的な行動とは




がんと診断され、終末期に至る過程において後悔や絶望感に悩まされない人はいません。

自分の人生に満足していたとしても、重い病気と診断され、後悔や絶望しない人はほとんどいないと思います。何をしてよいかわからず、とりあえず治療という選択を選んだという方も多いと思います。

人生があと一ヶ月しかないのに、残された時間を化学療法や放射線療法に費やしている方がなんと多いことか。

ご家族も病気を患い余命が短いと宣告されていても実感が湧きにくく、何をしてよいやら分からず、本人を励まし、治療を勧めているという人も多いでしょう。

できるだけ長生きしてほしいという思いからからもしれませんが、多くの家族は治療をすることを本人に勧めます。人生があと一ヶ月しかないのに病気との戦いに時間を費やし、苦痛を味わわせてしまう場合だってあるのに、なぜか私達は病気と戦う方を勧めてしまいます。

おそらくそのほうが罪悪感が少ないからです。治療の選択のほうが正しそうですよね。

化学療法は副作用があり、命を縮めることがあるという話は聞かされるのに、最後の最後まで病気と戦う選択を選ぶ人がなんと多いことでしょう。

要注意
がんの闘病で最優先すべきは、あなたの時間の使い方です。

適切な時期に人生の着陸モードに入らないと、後悔の多い最期を迎えてしまいます。

 

緩和ケア病棟やホスピスは、穏やかに最後の時間を過ごす場所だと思っている人は多いかもしれません。

緩和ケア病棟に入院する方であっても、数週間前までは治療をしており、治療が行き詰まり緩和ケアを紹介されるケースは少なくありません。

緩和ケア病棟に入院しても、加速度的に体が弱り、正常な判断ができなくなり、あれよあれよという間に亡くなってしまったなんて人はたくさんいます。

自分で自分の最後の迎え方を考え、緩和ケア病棟や終末期在宅ケアを選択する人は一握りです。

残念ですが、正しく病状や余命を把握し、家族とこれから起こりうることについての話をしない人が多いのです。病気と診断され、「家族にこれから治療します」と宣言はするのですが、病気が良くならなかった場合どうするかとか、もし良くなったらどうするかという将来の話をしていないのです。

悔いをできるだけ残さないようにするには、正しい余命把握と、起こりうる将来について家族や医者と何度も話をしておくことが重要になります。

余命予測

自分が感じている余命と実際残された時間の食い違いは後悔の原因となります。特に自分が想定した余命よりも、実際のこされている時間が短い場合は辛い思いをしてしまいます。

医師の診断を受けたときや治療方針が変わったときは必ず残された時間を聞いて、把握しなくてはなりません。

治療方針が変わったときとは、転移が見つかったとき、化学療法のレシピが変わったとき、モルヒネなどの麻薬が始まったとき、痛みや食欲不振などの症状が現れたときなどです。

多くの場合、あなたが思っているよりも残されている時間は短いはずです。

残された時間が一ヶ月程度であれば、誰でも予測できます。このサイトに書いてある余命予測の項目を参考にしてください。

 

これからのことを話し合う:人生会議

悔いの残る最後望まない最後を迎えてしまった方の多くは、「これからのことを話し合う」場面を作っていなかったケースがほとんどです。

病気になり、様々な分岐点があったと思います。

ガンと診断されたとき、手術をしたとき、化学療法を始めたときなどです。大きな人生の分岐点だったと思います。

それ以外にも病気が再発したときや、化学療法を新しくするとき、化学療法が効かなくなったときなども大きな分岐点でしょう。

人生の大きな分岐点でその都度「これからの人生」について話し合う必要があります。

残されている人生をどう過ごすか考えるとき、大切なポイントは「残されている時間とできることのバランス」「やりたいこと」と「やるべきこと」「誰の力を借りれるか」「どこで過ごすか」です。

残されれている時間とできることのバランス

ガンは進行すると、体力を奪うため行動範囲が狭まります。残されている時間が短いほど、できることは少なくなります。

このサイトに訪れてくれる方の中には残されている時間が少ない方もたくさんいます。

働き盛りで病気になると、なんとか病気を治して、仕事に戻りたいという希望があるかもしれません。それが本当に可能か正しく病状を把握する必要があります。

仕事の復帰は難しいのに、それを目標にして治療を続けると、辛い時間が増えますよね。

自宅に戻って生活するのが精一杯な病状なのに、「働くことを目標に辛い化学療法を頑張る」ことが望ましいことか考えなくてはいけません。

体力がなくなってからの化学療法は非常に辛く、貴重な時間を減らします。寿命が縮まるという意味ではなく、穏やかに過ごす時間が減るという意味です。

正しい病状把握と適切な目標設定をしないと、適切な終末期を過ごせません。

おだやかに生活する時間と治療をする時間は同時に成り立たない場合があるという理不尽な現実を受け止めてほしい。

すべきこと・やりたいことをリストアップ

残されている時間が限られているため、できることは限られてきます。

人生の後始末をしておく必要があります。そのため、絶対にやっておかなくてはならないこと、余裕があればやりたいことを分けて考え、優先順位をつけなくてはなりません。

あなた自身の葬儀に来てくれる人があなた自身をどのように評価するか想像して見てください。その時、頭に浮かんできた人たち(残された人たち)があなたに対し最高の評価をしてくれるように、行動しておく必要があります。

死ぬ前に財産の話をするのは辛いかもしれませんが、財産などの処理を予めしておかないと、残された家族が苦労することになります。そうなれば残された家族はあなたに対し、良い評価はしないと思いますよね。

 

どこで過ごすか・誰の力をかりるか

人生の最後を誰の世話にもならず過ごすことは不可能です。

多くの場合余命数ヶ月あり、自分で食事ができ、トイレも自分で行けるという状況であれば、自宅で過ごすために必要なことは食事の準備や外出に誰かの力を借りるぐらいのマンパワーで事足ります。

余命が一ヶ月になるとベッド上で過ごす時間が増えます。つまり、トイレ、お風呂、食事の準備などにマンパワーが必要になります。マンパワーを使う時間も増えます。

ご飯は3回、おむつ交換は一日何回もあります。想像できると思いますが、患者本人に対し、24時間、世話をする人が必要になるわけです。めちゃくちゃ大変です。

家族だけで自宅で患者本人を生活させるには、相当の時間を犠牲にする覚悟と準備が必要になります。

「最後の時を自宅で過ごしたい!」って考えているのであれば、自分の周りの家族に自分の世話を頼む必要があります。

体の力が著しく低下し、正常な判断ができなくなってしまうため、誰の世話にもならず最期を迎えることはできないのです。

 

財産、法律的なことの後悔を減らすには

財産などに関して最後の一ヶ月間に至までにしておいた方が良いことを下のリンク先にまとめてあります。

最後の一ヶ月前までに人生のあとかたづけをしておく

余命が一ヶ月を切りそうになってきたら近くの葬儀屋さんに相談に行くと、何をしておくべきか親身になって考えてくれます。医者やソーシャルワーカーは生きている間の支援はしてくれますが、お亡くなりになった後のことまで配慮し、相談に乗ってくれるのは葬儀屋だと思います。

また書籍で勉強しておくと心構えが出来ます。

写真整理

わたしはご存命のうちにたくさん写真を撮ることをオススメしています。

病気になると姿が変わってくるので写真を撮ることを嫌う傾向にあります。また、死にゆく人の写真を撮ることに申し訳なさ縁起の悪さのようなものを感じる人も多いと思います。

写真を撮るという単純な行為ですが、本人と病気と向きあわないと出来ないことです。是非写真を撮ってください。

写真を撮っておくと悲しみから立ち直る時間が短くなると信じています。

もう1つは写真整理です。写真を整理すると、昔のことを思い出せます。歴史を確認するという行動は、「自己の存在と意義」について再確認できる行為です。自分の子供が小さかったときの苦労、仕事が忙しい時期に行った旅行の写真などの自分の歴史を見ると自然と自分の存在意義を感じることが出来るのです。

写真整理は具体的な行動であり、死という恐怖や絶望から身を守ってくれるので是非行ってください。家族の方も一緒に行うとよいでしょう。

親の若い時の写真を見たり、結婚式の写真を見て、会話することはとても大切な時間となるでしょう。

ちょっとレベルが上がりますが、慰霊を本人と決めておくのは素晴らしい過ごし方だと思います。どんな写真で毎日家族と会うのか真剣に考えている人は少なくありません。

後悔の少ない最期を過ごすために、ぜひ皆さんも余命予測と人生会議を行っておいてください。

人生会議
もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことです

残されている時間が極めて短い場合

悔いを減らした看取りをするにはできる限り患者のそばにいることが残される家族にとっても大切です。

残されている時間が一ヶ月ぐらいであれば、だれでも余命を予測できます。なんとか周囲のちからを借りて、一ヶ月間介護休暇を取得してください。

仕事のキリがついてから休みを取りますという方がいますが、手遅れになります。

もし、患者が食事ができないような状態になっているのであれば、もはや一刻の猶予もありません。悔いを残さいないためには、全力で休みを取得し、患者のそばにいるべきです。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。