最期を迎える前に余命一ヶ月の症状を知っておいてほしい
「がん」は、多くの人にとって死への恐怖を伴う病です。早期発見・早期治療で完治することもありますが、進行したがんが死に至る病であることに変わりはありません。
しかし、私たちは「どのように死を迎えるのか」を知らないために、その恐怖をより強く感じてしまうのではないでしょうか。
心理学では、不安を「自己の価値を脅かす破局や危険の漠然とした予感」と定義しています。この漠然とした予感を少しでも和らげるために、死へと向かう過程を理解することは非常に重要です。
最期の一ヶ月、穏やかな旅立ちのために
この記事では、がんが進行し、最期の一ヶ月でどのような症状が現れるのか、その経過をわかりやすくお伝えします。
ご家族が心の準備をするためにも、がんがどのように人生の終焉を迎えるかを知っておくことは大切です。
その知識は、必要以上の不安を取り除き、患者さんとご家族が心穏やかに最期の時間を過ごすための助けになるはずです。
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がんがもたらす、最期の変化
多くの方ががんを「恐ろしい病」だと感じていますが、その具体的な症状についてはあまり知られていません。がんの進行に伴って現れる共通した症状を理解することは、患者さんとそのご家族にとって非常に重要です。
がんの終末期に多くの患者さんが経験する症状は、主に以下の2つです。
- 異常な体重減少(筋肉の低下): がんの種類にかかわらず、病状が進行するにつれて体重が急激に減少し、筋肉も衰えていきます。これは、がん細胞が体のエネルギーを大量に消費するためです。
- 意識障害: 体の衰弱とともに、脳の機能も徐々に低下していきます。これにより、集中力がなくなったり、話のつじつまが合わなくなったりすることがあります。
これらの症状は、がんが最期に向かって進行しているサインです。しかし、この変化を事前に知っておくことで、患者さんが穏やかに最期の時を迎えられるよう、心の準備をすることができます。
異常な体重減少(悪液質)
見た目と筋力の変化
がんの進行は、見た目と体の機能に大きな変化をもたらします。どんな体格だった人でも、病気が進むにつれて筋肉や脂肪が急激に減っていきます。テレビや雑誌で末期がんの著名人が驚くほど痩せている姿を見たことがあるかもしれません。顔はげっそりとこけ、腕は細くなり、その一方で足はむくんでいるという方も珍しくありません。
筋力の低下:日常生活への影響
見た目だけでなく、筋力の低下は日々の生活にも影響を及ぼします。
- 動作が遅くなる:手足の筋力が落ち、動きがゆっくりになります。今まで当たり前だったトイレや入浴、着替えなどの動作が徐々に困難になっていきます。
- 行動範囲の縮小:筋力の低下に、興味や好奇心の喪失が加わることで、散歩など日課だった行動をしなくなることがあります。
- 急速な衰え:余命数週間になると、自分の力で歩くことが急に難しくなり、ベッド上での生活を余儀なくされます。自分の力で寝返りを打つことすらできなくなり、褥瘡(床ずれ)ができやすくなります。
飲み込む力と呼吸の衰え
手足の筋肉だけでなく、食べ物を飲み込んだり、呼吸や咳をしたりするための筋肉も衰えていきます。
- 食事の困難:固いものが食べられなくなり、お粥などの流動食しか喉を通らなくなります。飲み込む力が落ちることで食べ物や水が気管に入りやすくなり、誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。
- 誤嚥性肺炎のリスク:さらに筋力が低下すると、むせる力も弱くなり、食べ物が気管に残って肺炎を引き起こす誤嚥性肺炎につながることもあります。
命に関わる筋肉の減少は止められません。この時期に無理に食べさせようとすると、かえって患者さんの苦痛を増やすことになります。
衰えるのは筋肉だけではない
筋力の低下とともに、体中のタンパク質が減少します。血液中のタンパク質(アルブミン)が減ることで、血管の外に水分が漏れ出し、足のむくみや胸水・腹水が増える原因となります。
「食べないと体力が落ちる」と分かっていても、食欲そのものがなくなり、体は受け付けなくなってしまうのです。
集中力の低下
余命1ヶ月のヒント:外界への興味がなくなる時
がんが進行し、余命1ヶ月ほどになると、患者さんの心に変化の兆しが現れます。まるで静かなカーテンが下りてくるように、テレビや新聞といった外界への興味が薄れていくのです。
これは、単に「元気がないのかな?」と見えるかもしれませんが、実は集中力や注意力が低下しているという大切なサインです。たとえば、毎日新聞を読んでいたお父さんが、急に読まなくなったりしたら、それは心の準備を始めるタイミングかもしれません。
次のステップ:意識の変化と余命
さらに病状が進むと、その変化はよりはっきりと現れてきます。
- 話のパズル:食べることが難しくなる頃には、話のつじつまが合わなくなったり、不思議な言葉を口にしたりすることがあります。まるで、頭の中で言葉のパズルが崩れてしまったかのようです。このサインが見えたら、残された時間は数週間かもしれません。
- 見えない世界への旅:意識がさらに遠のくと、見えないものが見える幻覚に気づくことがあります。これは、心の旅が最終段階に入っている証拠です。この段階では、残された時間は週単位から日単位へと変わっていきます。
これらのサインは、患者さんの意識が少しずつ遠のき、穏やかな旅立ちへと向かっていることを教えてくれています。
がんは進行が早い老衰
老衰に似た、がんの最期
誰もが「がん」という病を恐れます。それは、その症状や最期が未知であるからかもしれません。しかし、がんの終末期の共通した症状をよく見てみると、まるで老衰のように、自然に命を終えていく姿が見えてきます。
多くの人が理想とする最期は、周囲に大きな負担をかけず、天寿を全うする老衰ではないでしょうか。しかし、どんな最期であれ、人は誰かの助けなしには旅立つことはできません。生まれたばかりの赤子が親の助けを必要とするように、人生の最期もまた、家族や誰かの支えが必要なのです。
がんと老衰、その違いと共通点
がんもまた、老衰のように体がゆっくりと衰え、命が尽きていきます。
老衰と異なるのは、その衰えのスピードです。最期の一ヶ月に入ると、今までできていたことが急激にできなくなり、様々な症状が現れます。しかし、多くの場合、亡くなる数週間前まで意識ははっきりしています。
頭がしっかりしている分、自分の体が衰えていく現実を強く感じ、つらさが増すかもしれません。
食事や排泄、移動、入浴といった日常の動作ができなくなるのは、多くの患者さんにとって最期の一ヶ月頃です。若い方の場合は、体力があるため、こうした介助が必要になってから、さらに数ヶ月を過ごすこともあります。
がんの最期は、恐ろしいものではなく、ただただ「命が尽きていく」という自然な過程なのです。
この記事を参考にしていただき、体が弱る前に準備をしておけば、本人も家族も無理の少ない最期の一ヶ月間過ごしてください。
参考文献:聖隷三方原病院 症状緩和ガイド
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。最期の迎え方に関する記事も参考にしてください。


こういう記事を書いてくれて有難うございます。
何度も何度も読みました。
近々見送る人がいます。
とても参考になりました。
身体が動けるうちに身の回りの終結をしたいと思います。
大変辛い時期だと思います。しっかりお看取りが出来ることを切に願います。
助かりました。母がおそらく、3月もたないと言われています。乳癌の肝転移です。私たち家族も心の整理をつけながら、看取りたいと思います。
母が明日告知を受けます。
余命6ヶ月。
でももっと早いかも知れません。
心臓です。何があるか。
母は去年の10月末に膵臓癌のステージ4bと診断されました。抗がん剤の使用はお断りし、自宅で療養していましたが、この度入院することになり、数日間で急激に弱り始めました。今の母の状態はまさに余命1ヶ月の状態です。心の準備をします。
かけがえのない家族を見送るのは辛いです。ただもっと早くから知っておきたかった事も後になって感じます。私の妻は亡くなる1週間前まで自宅で食事も取り会話もゆっくりでしたが出来ていました。42歳という年齢もありまだもう少し頑張れると思ってましたが、急な息苦しさがあり救急搬送、その後立つ事や食事を取る事なく1週間で旅立ちました。
あまりの出来事で気持ちの整理がつきませんがもっと準備出来ることあったなと後悔してます。この様な情報がもっと早くから、多くのがん患者やその家族に伝わるといいなと思いました。
このページを読むのに勇気がいりました。乳がんを1年前、今肝臓の胆管の管と尿管のを入れてます。浮腫が進んできて、息も肩でしてます。お腹周りも丸太の様で苦しいですが、痛み止め飲みながら過ごしています。みんな一度は通る道なんだよねって感じました。ありがとうございます。
身寄り頼りがいない。たまたま救急車の要請の電話がなり要請してやりました。養子縁組で連絡し自宅にいないことがわかり
本人に通帳が引き落とせないこと、年金が88歳で一度も機内話したら通帳化してください持っていかれる
養子縁組は解雇され、弁護士に相談したら脳の病院にて認知症の検査受けてください病院3階も入りもう嫌だと諦めました
がんセンタに行き余命6か月手術88歳やると体力がなく出来ないと、この人を私10か月見ましたが困ってしまいました
この先毎日食事は持っていき体調を見ていますが、ふあんでなりません、
コメントありがとうございます。残されている時間が限られ、とても不安だと思います。調子の良い時と悪い時上がると思います。調子の良い時だけ、難しいことを考えるようにして、調子の悪いときは体を休めてください。